野菜を急速冷凍して有効活用!農家に勧める収入アップ術
野菜を栽培する農家の方は、どのような問題を抱えているのでしょうか?
農業は収穫時期が限られ、収穫量が天候などに左右されやすいため、安定した供給が難しいこと。また、規格外になると出荷できずに廃棄ロスが多くでること。
自然を相手にする産業のため、収入を安定させること、収入を上げることが難しいという問題があります。
このような問題への解決策の一例として、急速冷凍機の導入があることをご存知でしょうか?
冷凍加工することで冷凍野菜の販売や、野菜を原料とした加工品の製造ができます。
冷凍野菜は長期間保存できるので、通年での供給が可能。下処理済みなので使いやすく、とれたての鮮度や栄養価を維持し、安心・安全な野菜として付加価値が上がります。
また、規格の問題から出荷できずにいた野菜や、名物野菜を活用することで、新たな商品開発、販路拡大につなげることができます。
急速冷凍して野菜を有効活用する方法、農業を活性化させようという取り組みで成果を上げている事例をご紹介します。
目次
農家の抱える問題
安定供給が難しい
野菜は収穫時期が限られているので、通年での供給が難しいです。また、天気や自然災害などの被害を受けやすく、一定の品質で生産することが困難。
収穫量が多い年もあれば、少ない年もあり、安定供給が難しいという問題があります。
販路を開拓しようにも、スーパーや飲食店など小売店と取引するためには、安定した供給が必要です。野菜は収穫量が安定しないので、個人での契約がしづらいです。
廃棄ロスが多い
農協や市場などに出荷する野菜は規格制限が厳しく、大きさや形などが規格外の野菜は出荷できません。出荷できない野菜は廃棄されることが多く、ロスが多いという問題があります。
また、豊作で収穫量が多いと、供給過多によって出荷できないことがあり、野菜の価格も下がってしまいます。
安定収入が難しく、担い手が不足
安定した収入を確保することが難しいので離農者が多く、高齢化が進んでいます。担い手が少なく、特に若い人たちの農業離れが問題となっています。
設備投資や販路拡大など、新しく何かを始めようと率先して行動する人たちが少なく、産業の活性化が難しいです。
急速冷凍機の導入で解決
急速冷凍することで、鮮度・美味しさ・栄養価を落とさずに長期間保存できるようになります。
急速冷凍機を導入することで、どのような問題が解決できるのか見ていきたいと思います。
通年での供給
急速冷凍することで、とれたての品質を維持したまま通年での供給が可能になります。
野菜は水分が多いので冷凍には不向きですが、ブラチング加工やカット加工することで冷凍できるようになります。
冷凍コーンや冷凍インゲン、冷凍ほうれん草など、さまざまな冷凍野菜が製造されています。
また、ジャガイモなどは、カットポテト・マッシュポテト・ベイクドポテト・フライドポテトと、多様な商品の製造ができます。
さらに、サツマイモは大学芋に加工、ニンジンはニンジンジュースに加工するなど、野菜を原料とした商品を製造することで、製造ラインを通年で稼働させることができます。
地元の名物野菜や規格外の野菜を有効活用
地域でよくとれる野菜や、規格外で出荷できずにいた野菜を活用して、商品開発ができます。生産農家とメーカーが提携して、地域でとれる食材をブランド化させ全国に販売することが可能。
例えば、石川県金沢市では、地元で豊富にとれる五郎島さつまいもを使ったスイートポテトやプリンを商品化させ、販売しています。
契約農家、加工会社、パティシエ、コンビ二が提携して店頭販売、インターネット販売を通じて、地元野菜を利用した商品開発、消費拡大を目指しています。
付加価値の向上
急速冷凍することで、衛生面での心配がなく、安心・安全で品質の良い野菜を安定して供給できます。鮮度や品質を維持できるので、着色料や保存料などを使用せずに、収穫時と変わらない美味しさ・栄養価を維持することが可能。
また、下処理済みなので使いやすい便利な野菜、新鮮で栄養価の高い野菜として、付加価値が上がります。
販路の拡大
卸売業者を経由して、冷凍野菜の販路を拡大できます。地元の生協や直売店などはもちろん、学校給食や全国に展開している大手食品チェーンなどに卸すことが可能。
安定した供給ができるので、販売先との契約がしやすくなり、安定した収入を得ることができるようになります。
農業活性化への取り組みと成果
個人で急速冷凍機を導入して、商品開発をすることはなかなか難しいですが、団体で行うことでより設備投資や労働力を確保できます。その一例として、農業従事者の収入を安定させるための取り組みで、成果を上げている農協組合があります。
また、地域で農業を活性化させようと、6次産業化の取り組みが広がっています。地元でとれる食材を活用して、6次産業化を進めている町をご紹介します。
6次産業化への取り組み
収穫した農作物を加工して販売する、6次産業化の取り組みが広がっています。
6次産業化とは、農業や漁業などの1次産業が盛んな地域で、その地でとれる食材を生かして産業を活性化させようという取り組み。農林漁業という1次産業、加工業という2次産業、販売・流通・サービス業という3次産業を提携して経営を多角化して行うことです。
1次産業従事者の収入を増やし、地域の活性化につなげる狙いです。事業認定されると、設備投資や宣伝費などの融資や、販売方法や経営に関する相談など、地方自治体のサポートが受けられます。
青森県・深浦町での取り組み
高齢化の進む青森県・深浦町では、町をあげて6次産業化を進めています。
2012年に町の第3セクターが、「深浦町農水産物加工場」を設立。急速冷凍機や製粉機などの設備投資を行い、生鮮品の販売以外にも、トマトやニンジンをジュースやポタージュ、ドレッシングなどに加工し販売しています。
2013年の売り上げは1800万円。水産業も盛んな地域なので、野菜と水産物を有効に使い、「雪にんじんとほたてのパスタソース」などの商品開発も行っています。
販路を拡大させ、農家が経済的に安定することで、担い手の確保につなげる狙いがあります。特に、農業を志す若者が増えることで、地域の活性化につなげようとしています。
北海道・JA中札内村での成果
北海道・JA中札内村では、農業従事者、組合員の収入を安定させるために、1992年に冷凍枝豆事業を開始しました。収穫時期の8~9月に収穫した枝豆を、収穫後3時間以内に加熱処理し、急速冷凍しています。
生産者が枝豆をJAに出荷し、JAが加工・販売を行うことで、冷凍枝豆の販路を拡大させました。生協や大手居酒屋など180社と契約を結び、全国に流通させています。
2005年に工場・冷凍施設を増設し、地域の雇用も増大。2009年には、枝豆の生産農家が104戸、生産量2492トン、生産額4億7000万になっています。
また、2005年から規格外の枝豆などを材料にした加工商品の製造を始めて、枝豆を無駄なく有効活用しています。「えだ豆羊羹」「えだ豆アイスクリーム」「えだ豆そば」「えだ豆カレー」などが商品化されています。
また、海外への輸出も開始しています。2007年からアメリカの寿司店への輸出が始まり、シンガポールやロシア、アラブ首長国連邦などに販路を拡大。
日本食ブームにより、日本食レストランや日本食材をおくスーパーでの需要が増えています。
まとめ
野菜は安定供給が難しく、ロスが多くでてしまうため、労働力に見合った収益を上げることが難しいという問題を抱えている農家の方が多いです。
しかし、急速冷凍することで、とれたての鮮度、栄養価、美味しさを維持したまま長期間保存できます。
品質の良い野菜を安定して供給することができ、今までロスになっていた野菜を有効活用して商品を作り、販売することが可能になります。
農業を通して地域を活性化させる取り組みが広がっているので、野菜をどのように活用できるのか再考する機会を持つことをお勧めします。