新商品の企画に必須!賞味期限の決め方と冷凍食品に必要な急速冷凍
賞味期限の設定方法を知っていますか。
食品には基本的に賞味期限または消費期限を記載する義務があります。
不適切な期限を設定してしまうと食中毒などの問題が起こる可能性があるため、賞味期限は食品に関わる業者であれば必ず知っておくべき知識です。
今回は賞味期限と消費期限の違いや期限の設定方法、冷凍食品とそれに必要な急速冷凍技術をお伝えします。
賞味期限と消費期限とは
賞味期限は食品業者から一般消費者まで誰もが関わりのある情報です。
しかし、賞味期限と消費期限の違いやどのような食品に使われているかは詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。 食品には基本的に賞味期限または消費期限の記載が義務付けられています。ここでは農林水産省による賞味期限と消費期限の定義を紹介します。
賞味期限
賞味期限とは、「袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この『年月日』まで、『品質が変わらずにおいしく食べられる期限』」のことを言います。
「おいしく食べられる期間」ということで、賞味期限が過ぎたからといって安全性に問題が生じるわけではありません。
賞味期限は、ハム、レトルト食品、冷凍食品など、比較的品質の劣化が起こりにくく、保存がきく食品(6日以上が目安)に使われています。
消費期限
消費期限とは、「袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この『年月日』まで、『安全に食べられる期限』」のことです。
消費期限を過ぎてしまうと安全性を欠く恐れがあるため、食べない方がいいとされています。
お弁当やサンドイッチ、お惣菜、ケーキなど劣化が起こりやすく、比較的保存がきかない食品(5日以内が目安)に設定されます。
賞味期限・消費期限のどちらも開封されていない状態で食品に適した環境(温度など)で保管されていることを前提として設定されています。
そのため、保管温度が高かったり、開封してしまっていたりすると劣化が早く進み、期間内であっても食べられないことがあります。
賞味期限と消費期限の決め方
国内の食品の場合は製造業者、加工業者、販売業者が、輸入食品の場合は輸入業者が設定しています。
消費者庁は消費期限・消費期限の決め方として「食品期限表示の設定のためのガイドライン」を出しています。
このガイドラインの内容は、期限を設定する食品についての責任を負う製造業者などが科学的・合理的根拠をもって適正に設定すべきとするものです。
ただし、完全なルールではないため、科学的、合理的根拠があって、説明できれば問題ありません。
ガイドラインによれば、科学的、合理的根拠として理化学試験、微生物試験、官能検査の3つを試験方法が使用され、期限が設定されます。
設定された期間に安全係数(1未満)と呼ばれる数字を掛けた期間が賞味期限、消費期限として食品に表示されます。
では、3つの試験方法と安全係数について説明していきます。
3つの試験方法
■理化学試験
製造日からの品質劣化を理科学的視点から評価し、設定する方法です。
粘りや濁り、pHや酸化などが判断の指標となります。
製造日とその後の測定値を比較することで普遍的に品質の変化を判断することができます。
■微生物試験
製造日からの品質の劣化を微生物学的視点(菌の増殖)から評価し、設定する方法です。
製造方法や温度、包装など条件に合わせた効果的な指標(一般生菌数、大腸菌数など)を選択します。
食品の種類によって許される数値が異なるため食品の特性を考慮する必要があります。
■官能試験
食品の性質を人間の感覚である、味覚や嗅覚などを用いて評価する方法です。
製造日の品質を満点とし、日数が経過するにつれ、品質がどれほど劣化したかを試食して評価します。
定めた基準の範囲で点数を下回るまでの期間を測定します。
安全係数
安全係数とは賞味期限・消費期限を決める際に、試験によって決められた期間に掛ける1未満の数字のことです。
賞味期限・消費期限には食品の特性に応じて、1未満の安全係数をかけ、試験によって決められた期間よりも短い期間に設定することが基本となっています。
決められた期間が10日で安全係数が0.8の場合、食品に表示される表示期間は8日になります。
安全係数は0.7~0.8で設定されることが多いですが、新鮮さをアピールするためにわざと0.7未満の値に設定する業者もいます。
どの試験方法でも結果を数値化する必要があります。結果を数値化することで、客観的な項目として扱われるためです。 期限設定の根拠となった資料は整備、保管し、求められた場合には情報提供するべきだとされています。
期限設定の根拠となった資料は整備、保管し、求められた場合には情報提供するべきだとされています。
賞味期限の設定に不要な試験
3つの試験方法が記載されていますが、賞味期限・消費期限の設定において、この試験をすべて行う必要はありません。
極端に言えば官能試験のみでも設定することができます。
ですが、食品衛生法により規格基準が定められているものについてはその基準を満たしていることを確認する試験が必要です。(規格基準にある食品はこちら)
また、特性が似ている食品に関しては食品の特性を十分に考慮してさえいれば、類似商品の試験や検査の結果を参考にして賞味期限・消費期限を設定することができます。
自社または専門の業者で試験を行う、他社の類似商品を参考に期限を設定するなど、企業によって様々な方法が使われています。
冷凍食品の賞味期限
一般的な食品の表示期限について説明してきました。では、冷凍食品の賞味期限はどのように決めるのでしょうか。
冷凍食品の賞味期限もほかの食品と同じ方法で決められます。
冷凍食品は冷凍されているため、一般的な食品に比べ長期間の保存が可能です。
そのため、基本的には消費期限ではなく、賞味期限が設定されます。 冷凍と聞くと味が落ちるなどのイメージを持たれていることがあります。
ですが、急速冷凍することでおいしい状態を保ったまま食品を冷凍することができます。
冷凍食品と急速冷凍
急速冷凍とは、食材の温度を急激に下げ、短時間で冷凍することで細胞の破壊を防ぎ、おいしい状態を保ったまま冷凍する方法です。
コンビニエンスストアやスーパーなどで売られている一般的な冷凍食品は基本的にこの急速冷凍が使われています。
急速冷凍を取り入れることで今まで冷凍できなかった食品を冷凍することや、鮮度などの問題で産地でしか食べられなかったものを全国に流通させることができます。
急速冷凍することで、おいしい食品をそのままの状態で賞味期限、消費期限を延ばすことができるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
賞味期限・消費期限は、ほぼすべての食品業者の方に関係するものです。
新しく商品を作る場合には賞味期限・消費期限を設定する必要がありますが、決め方を知っていれば余計な費用やリスクを負う必要がありません。
また、急速冷凍することで品質を保ったまま、賞味期限を延ばし、商品を全国に流通させることも可能です。
食品業者の方は、賞味期限の意味や決め方を覚えておいて損はないのではないでしょうか。