【美味しい魚を安全に流通!】急速冷凍技術でアニサキスを死滅!
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アニサキスによる食中毒が最近増加していることは知っているでしょうか?
冷蔵技術の向上などにより、生の魚が全国各地へ流通するようになりましたが、それに伴ってアニサキスの被害も年々増加しています。日本では寿司や刺身といった魚の生食文化が根付いているため、海外の国と比べても非常に多くの被害が出ています。
テレビ番組での放映なども盛んにおこなわれているアニサキスですが、水産品を扱う方、漁協関係者の方からすると非常に厄介な敵です。如何にしてアニサキスから魚を守って安全に流通させようかと考えているのではないでしょうか。
本稿では、アニサキスから魚を守るために、急速冷凍機を導入することが非常に有効であることをお伝えします。
急速冷凍を行うことによってアニサキスを死滅させることができます。
また、高度な技術による冷凍で魚の鮮度も最大限に保つことができ、新鮮な魚を全国各地へ流通させ、販売量を増やすことも可能になります。
そのほかにもたくさんのメリットがあるので、この先で詳しくご紹介します。
目次
アニサキスについて
アニサキスの生態
アニサキスとは海産動物に寄生する寄生虫であり、日本人がよく食べるアジやサバ、サケ、タラ、イカなどにも寄生しています。
大きさは1センチから3センチほどと肉眼でも見える大きさで、体色は白っぽい色をしています。
アニサキスによる被害の内容と現状
このアニサキス、魚が生きているときは内臓に寄生しているのですが、魚が死ぬと内臓から筋肉に移り住みます。その為、新鮮なうちに内臓を取り出せばいいのですが、死後数日経過している魚だとアニサキスが身に寄生しており、刺身などにした時に気づかずに食べてしまいます。そのようにしてアニサキスは人間の体内に侵入します。
こうして人間の胃袋の中に侵入してきたアニサキスは、胃袋の壁を食い破ろうとします。その際に人は激しい腹痛を感じ、立っていられないほどになることもあるそうです。
アニサキスは胃の中で4日ほどしか生きられないために、もしその激痛に耐えられるのであれば放置していれば治りますが、小腸にアニサキスが侵入してしまうと開腹手術が必要になってしまうため、早急に病院へいきましょう。
そしてこのアニサキスによる被害ですが、先にも書いたように年々増加傾向にあります。冷蔵技術の向上や、マスコミによるグルメとしての生食の報道などにより、生魚の流通が活発になったことがその理由の一つです。
上図は年間のアニサキスによる食中毒の患者数の推移を表しています。
2006年から2013年の間に患者数は約18倍にも増加していることがわかります。
業者が受けるアニサキスによる被害と対処法
水産業が被るアニサキスの被害
消費者目線ではなく、水産業者の目線でアニサキスによる被害を見ていきましょう。水産業者が被る被害は大きく分けて2点あると考えられます。
○アニサキスによる食中毒患者数の増加に伴いアニサキスの認知度が高まると、消費者が不安を感じることが多くなり、生魚の需要が下がってしまうこと
○実際にアニサキスによる食中毒患者が出てしまった場合、流通させた業者も責任を問われること
以上の2点です。
まず、前者から詳しく見ていきます。
前項でも述べたように、年々被害件数が増加しているアニサキス食中毒ですが、現在でこそあまり消費者から認識されていませんが、今後さらに患者数が増加すると、認知度が上がると考えられます。
そして、アニサキスがついている可能性がある生魚の需要が下がり、価格の下落が起こります。そのようにして、水産業者の売り上げが下がってしまうことでしょう。
次に後者に関して考えていきます。アニサキスによる食中毒患者が発生した場合、その患者の喫食歴を過去4日間にわたって調査され、感染源を特定されます。感染源である飲食店や小売店が特定されると、その後、そうした店に商品を流通させた業者の評判が下がりかねません。
このような状況に陥ってしまう前にアニサキス対策を行うことが水産業者の課題になってきます。
アニサキスを死滅させる方法
では、どのようにすればアニサキスに対処できるのでしょうか。
アニサキスを死滅させる方法は2つあります。
それは、加熱と冷凍です。
アニサキスは非常に熱に弱く、70℃ほどの熱を加えるだけで即座に死滅させることができます。しかし、加熱してしまっては生ではなくなってしまうので、今回はもう一つの方法である冷凍に着目していきます。
アニサキスは‐20℃の温度で24時間冷凍することで死滅します。しかし、通常の業務用冷凍庫を使ってアニサキスを死滅させることは非常に困難です。
その理由は、安定した温度管理が難しく、-20℃という温度設定を保つことができないということです。
冷凍庫にはデフロスト機能という冷凍庫に冷風を供給しているファンに付いた霜を除去する機能が備えられています。このデフロストは1日に4回程行われますが、デフロストを行っている際に庫内の温度は約5℃前後上昇してしまいます。また扉の開け閉めによっても庫内の温度上昇が起こるでしょう。
また、食材が冷凍庫に投入されてから、-20℃の凍結状態まで冷えるまで、約半日ほどかかってしまうことも考えなくてはいけません。
これらの理由より、通常の業務用冷凍庫でアニサキスを死滅させることは難しく、かなり時間を要してしまいます。
急速冷凍機による対処法
そこで、冷凍庫の中でも最新技術によって作られている急速冷凍機による対処法を紹介します。
急速冷凍機では食材を‐35℃という非常に低い温度で急速に凍結することができます。下の図を見てみると、食材の温度が‐20℃まで到達する時間が、通常の冷凍機と急速冷凍機で3倍以上も違うことがわかります。
さらに、最終到達温度も通常冷凍庫が‐18℃であるのに対して、急速冷凍機では-35℃まで下がるために、アニサキスが死滅するまでに要する時間も大幅に短縮することができるでしょう。
また、デフロストによって温度上昇が起こる心配もありません。急速冷凍機は霜が付きにくい作りになっており、デフロストが行われません。
このように、短時間、且つ安定した低温度管理が行えるために急速冷凍機はアニサキスを死滅させることに非常に有効です。
急速冷凍を薦める3つの理由
アニサキスを死滅させることができるというメリットのほかに、大きな3つのメリットがあるので紹介します。
生より新鮮に流通できる
まず1点目は、生より新鮮な魚を流通させることができるということです。
地理的に海から離れてしまっている地域では、魚を届ける過程で数日かかってしまい、鮮度が落ちてしまいます。
こうした鮮度の悪い生魚と急速冷凍された冷凍魚を比較すると、後者のほうが新鮮さを失っておらず、解凍しても美味しいままで消費者のもとに届けられます。
急速冷凍は冷凍する過程で細胞を傷つけることなく魚を凍結することができるため、解凍しても生の状態とほとんど変わりません。
販路を拡大できる
メリットの2点目は、販路の拡大が望めるということです。冷凍してから流通させるため、生の状態の魚とは比べ物にならないほど長期間、鮮度を保つことができます。
そのため、現状では流通させることができなかった地域にも新鮮な状態で魚を届けることができ、ますます食品の流通が活発になるでしょう。
海外までも販路を広げることが可能です。
輸送コストを削減できる
最後に紹介するメリットは、輸送コストの削減です。
生魚がより好まれるようになってきた現在、東京など都市部にも北海道や九州で獲れた美味しい魚が流通しています。しかし、遠く離れた地方から新鮮な魚を流通させるには飛行機を使って短時間で輸送を行わなくてはならないために、非常に高い輸送コストを支払っています。
しかし、冷凍された魚であれば、長期間にわたって鮮度が維持できるために長時間輸送が可能になり、輸送コストの低い自動車や船での輸送で美味しい魚を流通させることができるようになります。
まとめ
このように、急速冷凍機を導入することでアニサキスの被害を抑えながら、新鮮維持や販路拡大、コスト削減など多くのメリットを享受することができます。
アニサキスの被害を抑えたいと思っている方、急速冷凍機を導入すれば、アニサキスだけでなく多くの問題も同時に解決できるかもしれません。
是非一度、ご検討してみてはいかがでしょうか。