高付加価値化で水産業を次の時代へ。冷凍が支える天草・真鯛養殖の戦略転換

熊本県天草市の株式会社ふく成は、真鯛・とらふぐ養殖を軸に6次産業化を推進しています。その要となるのがアートロックフリーザーです。コロナ禍や赤潮被害を契機に、冷凍は単なる保存ではなく経営を支える戦略へと進化しました。ふく成の取り組みと成果を紹介します。
基本情報
- 会社名:株式会社ふく成
- 都道府県:熊本県(養殖拠点:天草市)
- 業種:水産養殖業/水産卸売業/加工販売(6次産業化)
- 凍結品目:養殖真鯛(フィレ、切身、ポーションカット、加工品 ほか)
- 品質面での課題:鮮魚出荷の鮮度保持の時間的制約、自然環境リスクによる品質・数量の不安定化
- ビジネス面での課題:市場価格依存型の経営構造、コロナ禍による業務用卸需要の急減
- 導入機種:アートロックフリーザー
導入背景 「こどもたちの未来に食をつなぐ」養殖業から6次産業へ
熊本県天草市で真鯛・とらふぐの養殖を手がける株式会社ふく成は、「こどもたちの未来に食をつなぐ」をミッションに掲げ、持続可能な水産業の実現に取り組んでいます。
従来は養殖した鮮魚を市場へ出荷するビジネスモデルが中心でしたが、コロナ禍で業務用卸の需要が急減したことを機に、鮮魚卸中心のモデルから、加工・販売まで自社で手がける6次産業化へと大きく舵を切りました。アートロックフリーザーの冷凍技術を活用すれば、出荷タイミングを調整できるだけでなく、新たな販路開拓も可能になる。こうした発想から、2022年には加工場を新設し、アートロックフリーザーを増設。本格的に冷凍を軸とした高付加価値商品の開発へと進みました。

導入後に実施したこと ブランド構築と高付加価値化
ふく成は、フィッシュ(魚)とフレッシュ(新鮮)を掛け合わせた「フィレッシュ」ブランドを展開。アートロックによる急速冷凍と、冷凍保管中に旨みを高める冷凍熟成技法を組み合わせました。研究機関の味覚分析では、凍結前と比較して旨み・コクが約2.7倍に増加したという結果も得られています。冷凍=品質を落とすという従来のイメージを覆し、「冷凍することで、より美味しくする」という付加価値創出に成功しました。



また、商品開発は、子育て中の従業員の声から生まれます。「忙しい家庭でも使いやすい魚商品」という視点から誕生したのが、人気商品の「タイコロステーキ」。カット済みで使いやすく、家庭用から業務用まで幅広く活用されています。下処理済みのポーションカット商品は、結婚式場やホテルなど人手不足が深刻な現場で高い評価を獲得。冷凍により必要な分だけ解凍できる利便性も支持されています。


ふく成は、産直サイトでの冷凍真鯛販売を開始し、「食べチョクアワード」水産部門で2年連続1位を獲得。EC販売を確立しました。さらに、イオン九州、イズミ、生協など量販店への展開を拡大。2025年にはデイブレイク主催の商談会をきっかけにダイエーの一部店舗でも販売を開始しています。

導入後の成果 売上構造の変化やリスク対応力の向上、労働環境の変化
年間売上は約3億円。卸売が約7割、ECが約3割という構成で、そのうち冷凍商品が全体の約3割を占めています。鮮魚卸に依存していた体制から、加工度の高い高利益商品の比率を高める構造へと転換しました。また、ここ数年、天草では赤潮被害が続いています。一晩で大量の魚が失われるリスクがある中、冷凍加工体制を整えたことで、予兆段階での事前凍結が可能になりました。冷凍は単なる保存技術ではなく、自然リスクに対する経営の守りとしても機能しています。

さらに、水産業界の慢性的な人材不足に対し、加工事業の拡大は新たな雇用創出にもつながりました。子育て中のスタッフが時短勤務で働ける体制を整備し、若手から70代まで幅広い世代が活躍しています。加工販売を軸に据えたことは、事業収益だけでなく、地域雇用や業界イメージの改善にも波及しています。
今後の展開
ふく成は今後、加工度が高く利益率の高い冷凍商品の比率をさらに引き上げていく方針です。
目指すのは、
・高品質な養殖魚のブランド確立
・冷凍技術を活かした安定供給モデルの構築
・「魚を食べる文化」の再活性化
冷凍は、単なる保存ではなく、品質を守り、価値を高め、リスクを分散し、経営を強くする技術です。「こどもたちの未来に食をつなぐ」というミッションの実現に向け、アートロックフリーザーを軸とした高付加価値戦略は、天草から新しい水産業モデルを発信し続けています。