【徹底解説!】冷凍食品の品質を保つ流通、コールドチェーンとは
生鮮食品をはじめとした傷みやすい食品を扱われる方は、消費者まで品質を落とさずに届ける方法に悩まれたことがあるのではないでしょうか。
今回は、生産地から消費地まで、一貫して低温を保ったまま商品を流通させる仕組み「コールドチェーン」について解説します。
コールドチェーンの意味、市場規模、日本と海外での整備状況などを、主にJETRO作成の「2013年度主要国・地域におけるコールドチェーン調査」をもとにまとめました。
食品を冷蔵・冷凍配送で消費者まで高品質な状態で届けたい方は必見です!
目次
コールドチェーンとは
コールドチェーンの意味
コールドチェーンとは、商品を生産地から消費地まで、一貫して低温を保ったまま流通させる仕組みを言います。 冷蔵、冷凍の状態を保つ必要のある、生鮮食品や医薬品、電子部品などを運ぶのに利用されます。
コールドチェーンのメリット
生鮮食品を運ぶ場合、常温流通から低温流通に切り替えると鮮度保持期間が格段に伸びます。 鮮度保持期間が延びると、流通段階での廃棄ロスが削減できる、鮮度が高いまま消費者に届けられる、海外に輸出できるようになる、など様々なメリットがあります。
コールドチェーンの市場規模
国内、海外ともに冷凍、チルド食品の需要は拡大しています。それに伴ってコールドチェーンも整備が進められ、市場規模は拡大しています。
アメリカの調査会社「Report Ocean」によると、コールドチェーンの世界市場規模は、2022年から2030年までの予測期間において年平均成長率(CAGR)14.7%で成長し、2030年には792億7000万米ドルに達すると予測されています。それに伴い、国内のコールドチェーンも高いレベルで整備されています。
また、海外、特に東アジアではコールドチェーンの市場は急拡大しています。
この図から、東アジアの冷凍冷蔵食品の消費量は、先進国に比べてまだまだ少ないことが分かります。
今後、経済発展に伴って、冷凍冷蔵食品の需要は急拡大し、コールドチェーンの整備も進められていくことが予想されます。
このことからも日本式の物流が参入する余地があると考えられ、国土交通省は2021年3月に「ASEANにおける日本式コールドチェーン物流サービス規格に関する普及戦略」を策定し、日本のコールドチェーンを普及させる取り組みをはじめています。
コールドチェーンのシステム
コールドチェーンは生産・加工、流通、消費の段階に分かれます。それぞれどのような仕組みが必要なのかを解説していきます。
生産・加工
野菜や果物を流通させる場合、収穫地がこれに該当し、冷凍食品などの加工食品の場合は加工工場が該当します。
青果を生のまま流通させる場合は、コールドチェーンの第一段階として、予冷です。
予冷とは、青果の出荷前に行う低温処理のことを言います。青果の温度を下げることで呼吸量が減り、その後の品質の持ちが大きく変わります。
青果の予冷が終わった後は、出荷までの間、高鮮度保持冷蔵庫で保管します。
通常の冷蔵庫では食品が乾燥してしまいますが、高鮮度保持冷蔵庫は湿度を高くするなど、鮮度を保つための様々な工夫があります。
また、生肉や生魚、加工食品を冷凍して流通する場合は、まず冷凍することが必要になります。
この時に、より高品質な冷凍をすることがポイントです。食品は通常冷凍すると氷の結晶によって細胞が壊され、品質が低下します。
冷凍後の温度管理をしっかりしていても、冷凍した時に品質が落ちてしまえばその低品質のまま消費者に届いてしまいます。
そのため、最近の冷凍食品は食品の細胞を傷つけない、急速冷凍をすることが一般的になっています。
また、さらに高品質な冷凍を求める事業者は、急速冷凍機に電磁波の仕組みを組み合わせた特殊急速冷凍機を導入しています。
流通
生産から消費までを結ぶ非常に重要な段階です。
コールドチェーンの流通段階では、冷凍・冷蔵車よって食品が運ばれ、冷蔵・冷蔵倉庫で一時的に保管されます。ここには安定供給を目的とした長期保管型の冷蔵倉庫、卸売の一時保管の冷凍冷蔵倉庫も含まれます。
常温の輸送に比べてコストがかかる低温輸送ですが、国内は大手流通会社の様々な工夫により、常温の輸送とほとんど変わらない価格で輸送することができます。
しかし、海外に食品を輸出する場合には、国内の流通だけでなく、海外の流通まで把握する必要があります。 特に東アジアは冷蔵輸送が整備されていないことも多いので、注意が必要です。
消費
消費段階のコールドチェーンは、レストランなどの業務用冷凍冷蔵庫、一般家庭の冷蔵庫が構成します。
最近の冷蔵庫はチルドやパーシャル保存など、高度な機能が付いたものが多いため、消費段階でも鮮度を保ちやすくなりました。
コールドチェーンの課題
一貫した温度管理が必要
消費者に高品質な食品を届けるためには、生産・加工、流通、消費の全ての段階で徹底した温度管理が必要です。
このうちのどれかが上手く管理されないだけで、消費者のもとに高品質な商品を届けることができなくなります。
そして、国内でも完全に一貫したコールドチェーンが確立されているとは言い切れない部分もあります。
例えば、青果を出荷する時にしっかりと予冷がされなかったり、卸売市場で常温で野ざらしにされていたりといった問題があります。
青果は温度が上がると呼吸量が増え、劣化が急速に進んでしまいます。 商品を出荷される方は、どのような経路で流通されているか、一度確認してみることをお勧めします。
コールドチェーンを構築するのにはコストがかかる
コールドチェーンは生産加工、流通、消費の全てが整備されなければいけないので、コストがかかります。
流通段階で大規模な冷凍冷蔵倉庫が必要な場合も多いので、自前でコールドチェーンを構築するのは大手食品チェーン店などでなければ厳しいでしょう。
また、海外では道路、電気のインフラや、冷蔵庫の普及など、社会的な基盤を整える必要があるので、コールドチェーンが普及するのにはお金だけでなく時間もかかります。
海外のコールドチェーン
中国のコールドチェーン
中国のコールドチェーン市場は2015年から2020年にかけて毎年20%以上成長しています。
それでもまだまだ先進国に比べ冷凍・冷蔵食品の消費量は少ないため、今後も冷凍、冷蔵食品市場は拡大していく見込みです。
そのような需要を受けて、内陸部への高速道路の整備や、冷凍・冷蔵倉庫の建設が進められています。
「農産物コールドチェーン物流発展規画」が2010年に発表され、急速にコールドチェーン物流は整備されていますが、状況は沿岸部の都市部と内陸部で大きく異なるため、進出する地域の状況をよく調べる必要があります。
上海などの都市部ではコールドチェーンが整備されてきたことで、日系の小売業だけでなく、外資系の高級スーパーマーケットやローカルのスーパーマーケットでも冷凍・冷蔵食品が取り扱われるようになってきています。
しかし、日本からの輸出となると、冷蔵保存の食品は限られており、冷凍食品が大多数を占めます。
冷蔵保存の食品のほとんどは、中国で生産された乳製品や、精肉などです。
日本から輸出される冷蔵保存の食品が少ないのは、冷蔵温度帯を維持したまま日本から現地の店頭まで運ぶのが非常に困難なことや、賞味期限内に売り切れないリスクを回避するためと考えられます。
インドのコールドチェーン
インドの調査会社「Mordor Intelligence」によれば、インド全体のコールドチェーン業界は、2020年から2025年の予測期間中に年間成長率14%以上で成長すると予想されています。
特に都市部のコールドチェーンは高い水準まで発展していますが、インドの年間の農産品の40%は廃棄されていることや、必要とされている冷蔵貯蔵量6100トンに対し3011トンしか容量がないことを考えると、今後もインドのコールドチェーン市場は急速に発達していくことが予想されます。
冷凍カテゴリーでの食品の悪化の苦情は1%に満たず、商品の損失が認められた場合、配送業者か卸売業者に返品される仕組みになっています。
主要都市でのコールドチェーンが整備されている一方で、全国レベルでのサービスは未だ発展途上なのは、多くの企業が限られた地域でのみの冷蔵・冷凍配送事業を行っているためです。
そのため、インド全土に冷蔵・冷凍の商品を流通させることはまだまだ課題が多いといえるでしょう。
まとめ
コールドチェーンは食品を高品質な状態で配送したい場合は、必ず知っておくべき流通方法です。
特に海外に食品を輸出する方は、消費者のいる地域でのコールドチェーンの状況を
詳しく調べることをおすすめします。