急速冷凍を導入して解決!漁協が抱える課題と取り組み
天候など自然的要因に左右されやすい漁業に従事している漁協には、どのような問題があるのでしょうか?
漁業は漁獲量が安定しないので通年での供給が難しいという問題、鮮度維持が難しいので流通範囲を広げにくいという問題があります。また、規格外の魚介類は安い価格で取引きされることや、廃棄されることがあり、未利用魚となる魚介類がでてしまいます。
このような問題の解決策の1つとして、急速冷凍機の導入をおすすめします。
急速冷凍することで、とれたての鮮度、品質を維持したまま長期間の保存ができます。その結果、安定した供給や、広い範囲に流通させることが可能になります。
今まで利用されてこなかった魚を使って新しい商品開発なども可能になり、漁業の活性化につなげることができます。
急速冷凍機を導入することで解決することや、急速冷凍機の導入事例として、釧路市漁協と支笏(しこつ)湖(こ)漁協の取り組みをご紹介します。
目次
漁協の抱える課題や問題点
通年での安定供給が難しい
漁業は漁獲量が一定ではないので、安定供給が難しいです。天候や季節によって、漁獲量が少ない日、漁に行くことができない日があります。
また、禁漁時期のある魚介類は通年での供給が困難です。カキなどの貝類や一部の魚は禁漁時期があり、その間は漁ができません。
流通範囲を拡大することが難しい
鮮度維持の難しい魚介類は、地産地消されることが多く、広い範囲に流通させることが難しいです。
例えば、生シラスは鮮度維持が難しいため、とれたてでないと生で食べることができません。そのため、漁港近くの市場や飲食店に出回ることがほとんどです。
また、離島などで島内に市場がない地域では、市場に卸すまでに時間がかかってしまい、その間に鮮度が落ちてしまいます。すると、輸送費がかかる上に商品価値が落ちるため、安い価格で取引きされることが多く、利益があまり出ません。
未利用魚が出てしまう
規格外のため正規での取引が難しい、未利用魚が多くでてしまいます。
小型のサバやイサキなど、大きさが規定に達していない魚や、ロットの関係で規格外とされる魚介類は、安価で取引きされることが多いです。
また、養殖用飼料として利用されることや、廃棄されてしまうこともあります。
流通ルートを開拓することが難しい
魚介類は季節や天候などによって漁獲量が安定しないので、スーパーや飲食店などと直接提携することが難しいです。
そのため、市場を経由した既存の流通ルートに依存しがちになってしまいます。
新規の流通ルートや販売先を開拓しづらいという問題があります。
急速冷凍機の導入で解決できること
急速冷凍すると細胞を破壊せずに凍結できるので、鮮度や品質を落とさずに長期間の保存ができます。
その結果、とれたてと変わらない品質の魚介類を、広い範囲に安定供給することが可能になります。魚介類をより有効活用できるようになるのです。
通年での供給ができる
漁獲量が多い時期にとれたものを急速冷凍して保存することで、漁獲量が少ない時期や、天候が悪く漁に出ることができない日に回すことができます。漁獲量に左右されずに、また禁漁時期のある魚介類においても、安定供給ができます。
とれたてと変わらない品質で冷凍保存できるので、鮮度の落ちやすい魚介類においても生鮮品と変わらない品質で提供できます。また、一番美味しい旬の時期のものを長期保存することで、旬の時期を延ばして提供できます。
流通範囲を拡大できる
とれたての品質を長期間維持できるので、鮮度や品質を落とさずに広い範囲に流通できます。漁港から遠く離れた大消費地にも、とれたての魚介類を流通させることが可能。
冷凍しているので保存期間が長く、流通範囲を全国、また海外へも広げることができます。
また、刺身として食べることができる鮮度を保つことができ、産地直送の新鮮な魚介類として、付加価値を上げて販売できます。
未利用魚を有効活用できる
急速冷凍することで、未利用魚を有効活用できます。例えば、未利用魚をすり身に加工して、練もの、つみれ、ハンバーグなどの原料として利用することが可能。
今まで使われずにいたものを使い、新たな商品開発ができます。長期間の保存ができるので、常に安定した原料で、さまざまな商品を製造できます。
安定した生産ができ、流通ルートを拡大できる
漁獲された魚介類を急速冷凍して加工・販売することで、安定した生産が可能になります。安定した品質・量を供給できるので、飲食店やスーパー、学校給食、介護施設、水産加工場など出荷先を広げることができます。
市場を経由せずに提携できるので、流通ルートを拡大でき、漁業従事者の収入を上げることができます。
急速冷凍機の導入事例や取り組みを紹介
釧路市漁協の取り組み
魚介類は安定供給が難しいので、産地直送の提携が難しいですが、北海道の釧路市漁協は生協と協力して、産地直送商品の販売を実現しています。
釧路市漁協は、地域でとれる魚介類を積極的に流通させようと、1998年に漁港のすぐ近くに水産加工場、「総合流通センター」を開設。2007年に同漁協が運営する水産加工場で、トンネル型の急速冷凍機を導入しました。サンマのフィレや刺身用ムキイカなど、水産加工品の開発に取り組んでいます。
生産体制を整えることで、生協との提携商品、「生からつくったさんま三枚おろし」も製造が可能になりました。製造過程は、サンマフィッシャーという機械で頭、内臓、中骨などをきれいに取り除き、3枚におろします。そして、洗浄しきれいにしたサンマのフィレを、急速冷凍します。
ベルトコンベアがついたトンネル型の急速冷凍機を使い、-48℃で約7分凍結させます。大型の急速冷凍機で素早く冷凍加工できるので、漁期が限られているサンマにおいても、数カ月という期間で1年間の総販売量を生産できます。
製造された商品は、生協で「刺身で食べられる冷凍品」として販売され、売れ行きも好調。下処理済みなので使いやすく、ソテー、焼もの、揚げものなど、さまざまな料理に使うことが可能。鮮度が良いので、刺身としても食べることができます。
また、加工向け原料として、地元の加工会社にも出荷されています。あぶりサンマなどに加工され、回転寿司やイベントなどで販売されています。安定した出荷ができるので、漁業関係者の収入安定につながっています。
支笏湖漁協の取り組み
北海道の支笏湖漁協では漁業とヒメマスの増殖事業を行っています。支笏湖の環境保全とともにヒメマスの増殖、ヒメマスを使った地域活性に力を入れています。その一環として、地元の飲食店などでヒメマスを使った料理を提供しています。
ヒメマスの漁期は、自然保護の観点から解禁になる期間が短く6月~8月の間のみ。漁期でない期間は、従来の冷凍方法で冷凍したヒメマスを提供していました。しかし、冷凍すると品質が落ちてしまうというデメリットがありました。
急速冷凍することで、魚の細胞を破壊せずに、新鮮で品質の良い状態のまま長期間保存ができます。その結果、高品質のヒメマスを通年で提供できるようになりました。ご当地グルメとして、「アキヒメ温玉ライス」などの販売をしています。さらに、地元の飲食店や宿泊施設だけでなく、市街地の飲食店などにも販路を拡大しています。
生産体制を整えることでヒメマスのブランド化を推進することができ、観光の活性化にもつながっています。また、ヒメマス釣りを観光の目玉として、集客を目指しています。
まとめ
急速冷凍することで、魚介類をとれたての鮮度・品質を維持したまま長期間保存ができます。
安定した供給ができるようになり、品質の良い魚介類を広い範囲に流通することが可能になります。
魚介類をより有効に活用し、漁業の活性化につなげることができるので、同様の課題を抱えている漁協の方は急速冷凍機の検討をしてみてはいかがでしょうか。