【野菜加工業者向け】冷凍野菜の品質を上げるブランチング処理とは?
野菜を冷凍すると、ドリップが出たり形が崩れたりと、商品としての価値が下がってしまいますよね。
それを防ぐための、“ブランチング”というテクニックをご存知でしょうか。野菜の冷凍品質をグッと上げる方法です。
また、野菜の冷凍品質が上がるだけでなく、変色を抑えたり殺菌効果もあります。
今回は業務用の野菜を冷凍する時のブランチング処理について説明します。
(家庭で出来るブランチング処理の方法はこちらの記事へ
⇒【野菜の保存期間を劇的に延ばす!】ブランチング処理とは?)
野菜の冷凍方法に悩まれている方は必見です!
目次
ブランチングとは
ブランチング処理の概略
ブランチング処理とは、野菜などを冷凍する前に、冷凍耐性を高めるために加熱することをいいます。
野菜を冷凍すると、解凍した時に中の水分が出て品質が劣化してしまいます。ブランチングをすることで野菜の組織が柔らかくなり、冷凍に強くなります。
ブランチング処理に向いている野菜
枝豆などの豆類、イモ類、コーン、カボチャ、ホウレンソウなどはよく冷凍前にブランチングされます。
逆にエリンギなどのきのこ類はブランチをせずに冷凍することが多いものになります。きのこ類は含まれる水分量が少ないので冷凍に強く、ブランチをする必要がありません。
ブランチング処理の種類
通常のブランチングと低温ブランチングの2種類があります。
通常のブランチングは野菜を100℃の熱湯をくぐらせたり、蒸気をあてたりして加熱します。多くの野菜は100℃近くの温度で加熱すると軟化するので、解凍後に加熱調理に使われる場合に向いています。
低温ブランチングは60℃程度の加熱をする方法です。野菜は60℃付近の加熱をすると硬化するので、後工程の高温加熱殺菌による過度の軟化を防ぐのに用いられることがあります。
ブランチングの効果
野菜の冷凍耐性があがる
食品が冷凍に強いかは、食品の組織の強さと含まれる水分量で決まります。組織が弱く、水分量が多いと、冷凍した時に氷の結晶が細胞を壊してしまいドリップにつながります。
野菜は8割から9割が水分で出来ているので冷凍に弱いのです。野菜をさっと茹で、流水で冷やすことで組織が柔らかくなり、冷凍に強くなります。
酵素の働きが抑えられる
野菜はポリフェノールや酸化酵素などが含まれており、貯蔵中に酸化することで切断面の変色を引き起こします。
加熱処理(ブランチング)をするとこれらの酵素の働きが抑えられ、保存している間に野菜が変色するのを防げます。変色しやすい野菜としてはジャガイモやレンコン、ゴボウなどがあります。
殺菌効果
食品表面の細菌を殺す衛生面での効果があります。熱湯に通すと10秒間で90%、1分間で99%以上の菌が殺菌できます。
食品加工工場で野菜をブランチング処理して冷凍する方法
ブランチング処理に必要な機械
ブランチング処理をする場合は、食品の生産ラインに加熱と冷却をする機械が必要です。従来のラインに簡単に取り付けられるものや、ボイルと冷却が一体となった機械もあります。
ブランチング処理の方法
1. 加工する野菜を検査及び試験します。野菜の成熟度、大きさ、色、欠陥度などが、加工に適しているかを確認します。
2. 検査に合格したものを洗浄します。
3. ブランチング処理(湯通し)を行います。
4. 野菜を冷却します。野菜に冷水を吹き付けて一気に冷却するハイドロクーリングと呼ばれる方法がよく使われます。野菜を低温にすることでその後の冷凍工程の効率が上がります。
5. 色彩選別機(カラーソーター)によって品質検査を行います。色彩、形状、サイズの問題点をカメラで探し、欠陥品や植物性異物があれば除去します。
6. 野菜をトンネルフリーザーに通過させ、冷凍します。この時に急速冷凍するとさらに冷凍後の品質が良くなります。
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7. 最終検査を行います。欠陥がないか確認し、場合によってはグレード分けも行われます。
8. 完成した製品は梱包され発送されるか、在庫として冷凍保存されます。
ブランチングした製品の保存方法
保存方法
業務用の野菜を保管する場合は、-30℃ほどの業務用冷凍ストッカーに保管することをお勧めします。マイナスの温度帯であれば冷凍状態は保持できますが、食品に合わせた適正な温度帯でないと商品は酸化や変色で劣化していきます。
また、数か月単位で保管するためには、食品の酸化を防ぐために真空包装をする必要があります。
保存期間
保管可能期間は食品の種類や解凍時に求める品質によって変わるため、以下は目安となります。
真空パックに詰め、業務用の-30℃の冷凍庫で保管した場合は3か月程度保管できます。また、冷凍時に急速冷凍機を使った場合は6か月程度保管できます。
ウニのブランチング
ウニを冷凍する時にも、ブランチングはよく使われます。ウニは冷凍するのが最も難しい食材と言われていて、冷凍すると身崩れを起こして液状になってしまいます。
しかし、熱湯にくぐらせたり蒸したりして表面を固めることで、ウニも冷凍が可能になります。
ウニ本来の旨味は若干失われてしまいますが、生ウニは消費期限が短いため保存できるブランチング済みの冷凍ウニもよく出回っています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。野菜を冷凍すると水分が出てしなっとしてしまうものが多いのですが、ブランチングをするとある程度は水分の流出を防げます。
酵素の働きを抑えて変色を防いだり、殺菌効果があったりと、野菜を長期間冷凍保存する場合は必須のテクニックになります。
より良い状態で長く保管したい場合は、家庭でも実践できるのでぜひ試してみてください。
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