【鮮度長持ち!】チルド保存、チルド輸送の長所短所を解説します
食品の鮮度を長期間保つために、チルド保存を検討されている方も多いのではないでしょうか。
チルド保存は、食品が凍る直前の低い温度帯で保存するので、冷蔵保存より保存期間を延ばすことができます。
今回は、チルド保存に向いている食品、向いていない食品の紹介だけでなく、チルド輸送のメリット、デメリットまで解説します。
食品を扱われる業者の方で、チルド保存の導入を検討されている方は必見です!
目次
チルドとは
チルドとは、食品の温度を0℃付近に保って保存することをいいます。日本農林規格(JAS)では0℃から5℃と規定されており、10℃以下の冷蔵保存とは区別されます。
食品を冷凍せず、凍る直前の温度で保存することがポイントです。食品の温度が低いほど品質が保たれ、かつ冷凍すると品質が落ちてしまう食品に適しています。
また、約-1℃で微凍結するパーシャル保存とも異なります。
チルド保存に向いている食品
果物や野菜、発酵食品、乳製品、練り物など、鮮度が重要な食品の保存方法としてよく使われます。
果物、野菜
果物や野菜は、保管の温度が低ければ低いほど劣化が抑えられます。しかし、果物や野菜は冷凍すると細胞が損傷し、解凍後にしなしなになるなど品質が劣化します。
そこで、凍る直前の低い温度で保管するチルド保存が非常に効果的です。
果物や野菜は収穫して、本体から切り離された後も呼吸をしています。呼吸により、植物は蓄えている糖分を二酸化炭素と水に分解し、エネルギーを取り出します。
呼吸をすればするほど果物や野菜の糖分が分解されてしまい、成分の消耗や品質の劣化につながります。
果物や野菜の呼吸量は、体温が10℃下がると2分の1から3分の1になります。つまり、保管の温度が低ければ低いほど呼吸活動が抑えられ、品質の劣化を抑えられます。
特に、植物の中でも呼吸量が活発な種子、若い目、伸び盛りの葉物などはもともと呼吸量が多いため、低温で保管するか常温で保管するかで大きな違いが生まれます。
呼吸量が多い果物や野菜は以下の表で分かります。葉物のほうれん草、花蕾のブロッコリーなどの呼吸量が多いことが分かります。
発酵食品
キムチや納豆などの発酵食品は、チルド保存すると発酵を遅らせられます。発酵食品に含まれる酵母菌は、温度が低くなると活動が抑制されるためです。
そのため、長期保存が可能になります。
キムチや納豆のほかにも、ヨーグルトやイカの塩辛がチルド保存に適しています。
練り物
ちくわや蒲鉾のような練り物は、生ものなので通常は日持ちしませんが、チルド保存で消費期限を延ばすことができます。
冷蔵保存なら3日以内の消費期限が、チルド保存で1週間に伸びることもあります。
練り物は冷凍保存すると保存期間が格段に伸びますが、蒲鉾などは組織が壊れ、「す」が入った状態になるため、冷凍できません。
冷凍保存できない練り物は、凍る直前の低温で保存するチルドが適しています。
チルド保存に向いていない食品
ビールを低温で長期保存すると、濁ることがあるため向いていません。また、水分が多い食品は凍ってしまうことがあるので、向いていません。
チルド輸送とは
チルド流通輸送とは、輸送中に常に0℃付近の温度を保つ輸送方法のことを言います。
品質を重視する食品メーカーが、従来は常温や冷蔵で輸送されていた食品をチルドに切り替えるケースが多く、近年チルド食品は急増しています。
実際に大手食品卸会社の実績を見ると、総売上高が減少しているにも関わらずチルド食品の取り扱いは増加しています。
チルド輸送のメリット
食品の鮮度が長期間保たれる
チルド流通の最大のメリットは、やはり食品の鮮度が長期間保たれることです。
卸売市場を通して野菜を流通させた場合、出荷されてから消費者に届くまでのリードタイムは4~5日かかります。
常温や冷蔵で輸送すると、出荷時には青々として美味しいものでも、消費者に届くころには黄ばんだり味が落ちてしまいます。
実際、日本の野菜の3割は流通時の傷みと規格外で廃棄されています。
しかし、0℃から2℃で保つチルドなら、野菜類は1週間以上鮮度が保持できるので、消費者に届くまで新鮮さを保てます。
流通段階での廃棄ロスを削減できるのでコスト削減がつながります。
また、チルドにより商品の品質が上がれば商品価値も上がるので、値上げや売り上げ増加が期待できます。
ある生活協同組合では、野菜の輸送にチルドを取り入れたことで品質が上がり、17%購入点数が増加した、という例もあります。
チルドの商品は消費者に受け入れられやすい
もう一つのメリットとして、チルドの商品は消費者に受け入れられやすいという点があります。
最近のチルド商品の普及や、冷蔵庫のチルド室の一般化により、消費者はチルドに対して新鮮で美味しいというイメージを持っています。
そのため、チルドで販売することで新鮮な商品であるというイメージを持ってもらいやすいのです。
スーパーなどでは冷凍で流通させたものを「チルド」として販売したり、レトルトの商品を常温で流通させて「チルド」として販売することがあります。
これは消費のイメージに対応したもので、「レイチル」や「レトチル」と呼ばれます。
チルド流通のデメリット
一貫したチルド輸送を整備しなければならない
まず、チルド流通の最大のデメリットは、生産から消費者まで一貫したチルド輸送を整備しなければ効果が半減してしまうことです。
果物や野菜が、産地からチルド輸送で卸売り市場に運ばれることは一般的になりましたが、卸売市場では未だに果物や野菜がのざらしにされています。
果物や野菜は温度が上がると呼吸量も増加し、傷みが速くなります。そのため、生産者がチルド輸送していても、卸売市場で温度が上がってしまい、その後の賞味期限が半減してしまう品種もあります。
このような問題を回避するには、自前でチルド流通を構築する必要があります。大手の外食チェーン店が産地から直接買い付けを増やしているのは、こうした理由もあります。
市場流通を回避することで食品の品質保持期間を延ばし、店舗での廃棄ロスを減らすことで、コスト削減を図っているのです。
常温流通に比べコストがかかる
チルド流通の2つ目のデメリットは、常温流通に比べコストがかかることです。定温輸送のためのトラックは、冷却装置が必要で、燃料費も通常より多くかかります。
それでも大手物流会社の定温輸送が常温の輸送と同レベルの料金で利用できるのは、輸送会社の様々な努力があるからです。
輸送会社は、同じエリアの飲食店に営業をかけて輸送の効率を上げたり、輸送トラックを午前と午後の2回納品に使うなど、コスト削減に取り組んでいます。
こういった物流を小規模な企業が構築するのは難しく、チルド輸送はコストがかかる輸送手段になる可能性があります。
冷凍流通に比べて品質保持期間が短い
チルド流通の3つ目のデメリットは、冷凍流通に比べて品質保持期間が短いことです。
冷凍すれば1か月以上新鮮な状態が保持できる商品でも、チルドだと1か月新鮮な状態を保持するのは難しい場合が多いです。
なので、冷凍できる食品は冷凍した方が良い場合もあります。
また、通常冷凍できない食品でも、冷凍できる食品の幅が圧倒的に広い急速冷凍を検討することも考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。最近普及してきたチルドですが、生鮮食品や発酵食品など、冷凍できない食品の品質を長期間保つ画期的な方法です。
しかし、チルドで流通させるには一貫した温度管理が必要で、その分コストがかかります。
チルドの導入を検討されている方は、求める品質とコストのバランスを勘案されるのが良いのではないでしょうか。
また、扱っている食品が、チルドと急速冷凍のどちらが相性が良いのか比較することもお勧めします。
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