【ブライン凍結機と違う?】ブライン冷凍機の原理
ブライン液を用いた冷凍機や凍結機をご存知ですか?
ブライン液は、凝固点が低く温度がマイナスになっても凍結することがない不凍性の液体のことを指します。
熱伝導率が高く、効率よく冷却することができるので、様々な機械に使われています。
ブライン液を冷媒として用いているブライン冷凍機や、ブライン液に直接浸漬して食品を冷凍するブライン凍結機などがあり、この2つは原理や役割が違います。
目次
ブライン液を冷媒とした「冷凍機」の原理
ブライン冷凍機はブライン液を用いた冷凍機ですが、そもそも冷凍機とはどのような機械なのでしょうか?
冷凍機は冷凍庫や冷房などに使われている、温度を下げるための熱源設備です。主に圧縮機と凝縮器と膨張弁、蒸発器によって成り立っています。
冷凍機の中で循環している冷媒が、蒸発器で蒸発する際に空気を冷やす構造になっています。
冷凍機は、液体から気体に変化するときに熱を奪うという蒸発潜熱を応用しています。
例えば、アルコールを肌につけるとスーと冷たくなるのは、アルコールが液体から気体に変化するときに皮膚の熱を奪うからです。冷凍機は、このような冷たい熱を作り出す冷媒を利用しています。
蒸発器で液体状の冷媒が蒸発することきに熱を奪い、周りの空気を冷やします。
蒸発して気体となった冷媒が、圧縮機で圧を加えられると温度が上昇。凝縮器で温度の上がった冷媒が熱を奪われて液体に戻り、また蒸発器で液体から気体へと変化します。
このような変化の繰り返しを冷媒サイクルと呼びます。冷凍機は、液体→気体→液体→気体という冷媒サイクルによって冷気を作り出しています。
もともと冷凍用冷媒には、自然系媒体であるアンモニアが使われていましたが、1930年ごろから化学製品であるフロンが冷媒として使われるようになりました。
フロンは無臭で人体への毒性が低いので広く使用されていましたが、オゾン層を破壊する原因であることが判明。オゾン層破壊が世界的な問題となり、フロン以外の冷媒を使用する取り組みがされています。
自然冷媒を用いる冷凍機へと移行し、食品を扱う冷凍機ではアンモニアを冷媒とする動きが高まっています。
しかし、アンモニアは強い臭いと毒性があり人体に悪影響があるので、庫内に漏洩することを防ぐために間接冷却式が推奨されています。
間接冷却式とは、アンモニアを一次媒体として、二酸化炭素やブライン液を二次媒体に用いる冷却方式です。アンモニアが冷媒サイクルとして働いて二次媒体の冷媒を冷やし、二次媒体が冷房や冷凍庫などの冷気を作り出す仕組みです。
ブライン冷凍機は、アンモニアで冷やされた二次媒体であるブライン液を、ブラインポンプで循環させて冷却を行う冷凍機です。
ブライン冷凍機に使われている、ブライン液とは
なぜブライン液を冷媒に用いるのでしょうか?
ブライン液は凝固点が低く0℃以下でも凍ることがなく、効率よく冷やすことができるからです。
水を冷媒としている冷凍機もあります。環境に優しい水を冷媒として利用し、蒸発器の圧力を100分の1に下げて水を蒸発させます。その際に熱を奪いパイプの中の水を冷やし、冷やされた水が冷風を作り出します。
蒸発した冷媒は凝縮器で圧をかけられ凝縮されて液体に戻る、というサイクルを繰り返します。
水冷媒の冷凍機は冷房機には適していますが、5℃以下くらいまで冷やすと水が凍結してしまいます。冷凍庫や冷蔵庫の庫内を冷やすためには、マイナスの冷気が必要。そのため、冷蔵庫などの冷凍機には不凍性が高いブライン液を用います。
もともとブラインは、飽和食塩水または高濃度の食塩水を意味しています。塩水は昔から凍りづらいことが知られていて、価格も安いため低温用の媒体液として使われていました。
塩化カルシウム水溶液も安価で手に入りやすいので、広く使われている溶液です。
しかし、高濃度の食塩水や塩化カルシウム水溶液は、不凍性は優れていますが金属腐食性があります。ですので、現在では有機系のメタノールやエタノールなどを主成分としたアルコール溶液が多く使われています。
凍結温度が低く沸点が高いこと、毒性や可燃性がないこと、金属や樹脂と反応しないこと、熱伝導率が高いこと、などの性質を持ったアルコール溶液が用いられています。
エチレングリコール水溶液やプロピレングリコール水溶液などがそうです。
ブライン液を用いた「凍結機」
ブライン凍結機もブライン液を用いた機械ですが、ブライン冷凍機とは用途の異なる機械です。
ブライン冷凍機はブライン液を冷媒として冷気を作り出す機械ですが、ブライン凍結機は食品を冷凍させる用途で使われます。ブライン凍結機はブライン液を用いた急速凍結機です。
急速凍結機は、食品を急速に凍結させて冷凍によるダメージを防ぐことを目的とした機械です。急速凍結機にはブライン凍結機だけでなく、様々な方式の機械があります。
強い冷風をあらゆる方向から吹き付けるエアーブラスト凍結機や、磁場を発生させる凍結機などがあります。
食品を冷凍すると食感や味が落ちてしまうことは、広く知られています。
それは、食品内の水分が凍る際に膨張し細胞膜を破壊してしまうからです。破壊された細胞膜から旨味や水分が流れ出し、品質が劣化します。
しかし、食品内の水分が凍る温度帯、0℃~-5℃の間を短時間で通過することで細胞膜の破壊を防ぎ、食品の品質を損なわずに凍結することができます。
ブライン凍結機はブライン液を冷却させ、液の中に食品を漬けて凍結させます。食塩水や塩化カリウム水溶液、エタノール液などを-17℃~-40℃に冷やして用います。
釣り上げた魚介類などを船上でそのままブライン凍結させる場合は、食塩水を使うことがほとんど。
加工場などで導入されているブライン凍結機は、エタノール液に漬けて凍結させることが多く、その場合は食品を真空パックして凍結させます。
ブライン凍結機のメリットは、液体は空気に比べて熱伝導率が20倍大きいので、驚くほど早く凍結することができるということです。
凍結時間が短いのでブリやカツオなど厚みのある魚介や牛モモ肉などの畜産、痛みが早いカキなどの凍結に向いています。
槽内の液を攪拌することでムラなく凍結することができるので、亀裂や変形を防ぎます。
食肉、魚介、調理品など様々な食品の凍結ができ、食品本来の味や色を保持することができます。冷却器が小さいので、機械自体がコンパクトでスペースをとらないというメリットもあります。
まとめ
ブライン液はマイナス温度でも凍ることがなく、熱伝導率が高いという特性があります。
効率よく冷やすことができるので、ブライン冷凍機やブライン凍結機など、様々な機械に用いられています。
ブライン液を活用した機械は、今後ますます増えていくのではないでしょうか。