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【お酒は凍る?】意外と知らない、アルコールの凍結温度と活用例

アルコール飲料である、お酒を凍らせたことはありますか?

お酒は0℃でも凍ることがありません。アルコール度数によって凍結する温度が異なり、度数が高いほど凍結温度が低くなります。

マイナス温度でも凍らない性質を活かして、アルコールは様々な場所で活用されています。

中でも、アルコール溶液を用いた急速凍結機は驚くほど速いスピードで凍らすことができ、食品の冷凍分野では注目が集まっています。

お酒の主成分であるエタノールの凍結温度は?

アルコールとはOH基を持つ有機物の総称を指し、アルコールとして一般的に知られているのがエタノールという物質です。

お酒として飲まれているアルコール飲料の主成分はエタノールで、エタノールの割合、つまりアルコール度数によってお酒の強さが変わります。

水の凍結温度は0℃ですが、エタノールの凍結温度は-114.5℃。エタノール自体は-100℃以下にならなければ凍結しませんが、お酒はアルコールの度数によって凍結温度が変わります。

凍結とは水分子が結合してくっ付き、液体から固体へと変化することで起こります。液体から固体に変わる地点を凝固点と呼び、エタノールが混ざると凝固点が下がります。

凝固点が下がるのは、エタノール中のアルコール分子は水分子と結合しやすいという性質があるからです。エタノールが混ざることで水分子同士の結合が阻害され、凍結しにくくなります。

その結果、お酒は0℃でも凍らなくなり、アルコール度数が高いお酒ほど凍りづらくなります。

ビールのアルコール度数は4~6度、ワインは10~14度、日本酒は12~18度、焼酎は25~45度、ウィスキーは35~55度、ウォッカは40度以上。

アルコール度数と凍結温度の関係は、20度で-8℃となっており、アルコール度数が高ければ高いほど凍結温度が低くなります。

一般の家庭用冷凍庫の温度は-18℃くらいなので、アルコール度数が15℃のお酒ならば凍りますが、それ以上度数が強くなると凍りません。

日本酒のアルコール度数は15度くらいなので、家庭用冷凍庫で凍るのは日本酒くらいまでです。焼酎やそれ以上度数の高いお酒は凍らないということです。

ビール、日本酒、ワイン


ロシアなど寒い地域で飲まれるお酒は、ウォッカなど度数の高いものが有名。体を温めるためということもありますが、外に置いておいても凍らないという利点もあります。

冷凍しても凍らない性質を活かした、美味しいお酒の飲み方があります。蒸留酒を冷凍庫で冷やして飲むパーシャルショットです。

パーシャルとは-3℃~-8℃くらいの温度で冷凍保存すること。焼酎など40度近くある強いお酒は冷凍庫で冷やしても凍らないので、トロトロとした状態のお酒になり、とろりとした飲み応えになります。

パーシャルショット
出典:焼酎紀行


冷凍保存することで、美味しさが引き立つだけでなく保存期間も延びます。

度数が20度くらいのお酒だとシャーベット状になり、普段飲むお酒とは違う味を楽しむことができます。日本酒は半分凍っている状態になるので、みぞれ酒として飲むことができます。

春夏秋凍食材マーケット

低温でも凍結しない、アルコールの活用例

低い温度でも凍結しないので、アルコールは様々な分野で活用されています。

例えば、凍結防止剤として使用されています。寒冷地での融雪剤の成分としてアルコールは使われています。太陽光システムやスプリンクラーの凍結・腐食を防止する役目もあります。

また、食品工場や化学工場、冷凍設備、貯蔵タンクなどの冷却施設での冷媒としても多用されています。

また、エタノールとドライアイスを使い低温を作ることができるので、寒剤として使用されています。
ドライアイスの温度は-79度、エタノールの凍結温度は-114.5℃なので、エタノールにドライアイスを入れても凍りません。凍らないエタノールを用いることで様々なものを冷却することができます。

エタノールとドライアイス
低温帯を測る目的でも使用されています。温度計の多くは水銀が用いられていますが、アルコールを用いた温度計があります。

水銀の使用範囲は-50℃~650℃ですが、有機液体は-200℃~200℃と低温まで測ることができます。

また、食品などで水銀の使用ができない場合は、エチルアルコールを用いた温度計を使うことがあります。

エチルアルコールを用いると-100℃近くまで計測することができ、工業用のペンタンは-200℃~30℃の範囲を測ることができます。

アルコールを用いた画期的な急速凍結機とは

食品の冷凍分野で注目を集めているのが、アルコールを用いた急速凍結機です。

冷凍すると味や歯ざわりが悪くなり、食品の品質が落ちてしまうことは広く知られています。急速凍結機は、冷凍によるダメージを防ぎ食品の品質を守るために開発された凍結機です。

冷凍によるダメージは、食品中の水分が凍る際に氷の結晶を形成し、食品内の細胞を破壊することで起こります。

急速凍結は水分が凍る-5℃~-1℃の間を素早く通過させることで、氷の結晶の成長を抑制し細胞破壊を防ぐことができます。

急速凍結機には様々な機械がありますが、アルコール溶液など凍結温度でも凍ることがない、不凍液を用いた凍結機を液体凍結機と呼びます。
冷却した不凍液の中に、密閉した食品を漬けて凍結させます。

ekitai
漁船などで獲った魚をそのまま凍結させる際には、塩化ナトリウム溶液などの不凍液を用いた凍結機が使われています。

しかし、塩化ナトリウム溶液は金属腐食性があるので、食品を密閉させて凍結させる加工場や事業所などでは、無色透明で食品冷凍剤として認められている、アルコール溶液を用いた凍結機が多く導入されています。

液体は空気に比べて熱伝導率が20倍高いという性質があり、-30℃近くまで冷やした液体に漬けることで驚くほど速いスピードで凍結することができます。

例えば、厚さ1cmの牛肉は3分、2cmならば8~10分で凍らすことができます。ですので、牛モモ肉やカツオなど厚みのある食品や、カキやホタテなどすぐに鮮度が落ちてしまう食品に最適。

液体凍結機で凍結すると氷の結晶は5ミクロンほどで、食品の細胞20~30ミクロンよりも微細です。

そのため、細胞を破壊せずに凍結前と変わらない品質を保持することができます。冷凍マグロは生マグロと比べて変わらない味、鮮度を維持することが可能。

また、冷凍できないと思われている食品、コンニャクや豆腐においても冷凍することができます。

食品の細胞を破壊せずに凍結することができるので、ドリップ流出を防ぎ、味や鮮度、品質を落とさずに冷凍することができます。

まとめ

アルコールを含んだお酒はマイナス温度になっても凍結することがなく、度数によって凍結温度が異なります。

飲料としてだけではなく、アルコールは凍結防止剤など身近な所で使われ、工場などでは冷媒として使われています。

食品の冷凍分野においては、アルコール溶液を用いた液体凍結機の導入が進んでいるので、ますますアルコールの活用が広がっていくでしょう。

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この記事の監修者

木下 昌之

デイブレイク代表
木下 昌之

70年続く老舗冷凍機屋の3代目。2013年、特殊冷凍テクノロジー×ITを軸に国内唯一の特殊冷凍機の専門会社としてデイブレイクを創業。各種メディアや書籍「フードテック革命」にてフードテック企業の代表格として紹介されるなど、「急速冷凍」をコアに食品流通業界の根本改革に邁進中。

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