【実は身近なもの?!】瞬間凍結の種類とその温度
瞬間で凍結するぐらいの温度とはどのくらいの温度を指すものなのでしょうか?
極めて低い温度だと、様々なものが瞬時に凍ります。
身近なものでは、冷却させて退治する-40℃の殺虫スプレーや、-79℃のドライアイスなどが冷却能力の高いものとして思い浮かべるのではないでしょうか。
産業的に需要が高い液体窒素は、-196℃と優れた冷却能力があるので多岐にわたる分野で利用されています。
特に食品の冷凍分野においては、活用が進み、急速凍結技術の1つとして確立されています。
急速凍結にも様々な凍結方法があり、食品の凍結に必要不可欠な技術となっています。
瞬間凍結する殺虫スプレー
カメムシ、ゴキブリ、ムカデなどの虫退治に利用されている殺虫スプレーとして、殺虫成分が含まれていないスプレーが発売されています。
-40℃に冷却されたスプレーを噴射し、瞬時に凍らす殺虫剤です。虫の体の表面から効率的に熱を奪い仮死状態にするのですが、どのような冷却方法なのでしょうか。
その方法は、気化熱を利用した冷却です。
気化熱とは、周りの熱を奪いながら液体から気体に変化するときに必要なエネルギーのことです。
例えば、アルコールを肌につけたときにスーとするのは、アルコールが気化する際に肌の熱を奪うことで起こっています。気化する温度が低い液体ならば、より高い冷却効果を得ることができます。
瞬時に凍らす殺虫スプレーは、プロパンやブタンなどの液化ガスと、イソペンタンを主成分としています。
プロパンの沸点が約-42℃、ブタンの沸点が-0.5℃なので、これらのガスをスプレー缶に高圧で詰め噴射すると高い冷却効果があります。
イソペンタンの沸点は28℃なので、噴射とともに気化するわけではありません。
しかし、室温と変わらないくらいの沸点なので気化速度が速く、噴射された対象の表面温度をすぐさま下げる効果があります。
このように、2種類のガスによって効率よく熱を奪い、虫を一気に冷却することができます。
瞬時に凍らす殺虫スプレーは、どのくらい効果があるのでしょうか。
室温34℃で3秒ほどスプレーすると、噴射対象を-20℃近くまで冷やすことが可能。製品によって冷却能力の差はありますが、10℃くらいまで冷却できるスプレーや、-35℃近くまで冷却できるスプレーがあります。
ドライアイスよりも低温!-196℃で瞬間凍結させる液体窒素
冷却能力の高い物質として思い浮かぶのが、ドライアイスです。
エタノールとドライアイスを使うと、あらゆるものを一瞬で凍結させるほどの低い温度の液体を作り出すことができます。
エタノールの凍結温度は-117℃なので、-79℃のドライアイスを入れても凍りません。極めて低い温度の液体なので、ものを入れると瞬時に凍らせることができます。
例えば、ごま油やマヨネーズなどの油ものや、バナナなどもすぐに凍ります。
ドライアイスよりも冷却能力が高く、産業的に利用されている物質に液体窒素があります。
液体窒素は、-196℃まで冷やして液体化させた窒素のこと。
極低温なので様々なものの冷却に用いられ、産業ガスの中で最も多く使われているガスです。
液体窒素は幅広い分野で活用されています。
例えば、医療分野で皮膚科の治療法として使われていています。イボなど変形した部分を液体窒素で冷却して、細胞や組織を壊死させる治療法です。
金属加工分野では、半導体や金属化合物の製造の熱処理に、低温物理学の実験や凍結粉砕における冷媒などにも使われています。
また、冷凍保存分野で検体や血液、特殊物質を冷凍保存する際に利用されています。
食品の冷凍にも利用される瞬間凍結法
様々な分野で利用されている液体窒素ですが、何よりも食品の冷凍分野において活用されています。
食品に液体窒素を吹き付けることで、瞬時に凍らすことができます。一気に食品を凍結させるので、瞬間凍結と表現されることがありますが、正確には急速凍結と呼ばれている技術です。
普通の冷凍庫で食品を凍結させる方法を緩慢凍結と呼ぶのですが、緩慢凍結と急速冷凍の違いは凍結スピードにあります。
急速凍結は一気に冷却して、食品内の水分が凍る温度帯を素早く通過させることを目的としています。
一般的な凍結方法である緩慢凍結で食品を凍らすと、食感や風味が悪くなり品質が落ちてしまいます。
その理由は、緩慢凍結はゆっくりと冷えていくので食品内の水分が氷の結晶となる際に、体積が膨張して食品の細胞を破壊してしまうからです。
破壊された細胞から水分とともに旨味成分も流出してしまい、品質が劣化してしまいます。
急速凍結することで、食品の水分が凍る温度帯-5℃~-1℃を素早く通過し、氷の結晶の成長を抑えることができます。
その結果、細胞破壊を防ぐことができ、食品の品質を劣化させずに冷凍することが可能となります。
このように、急速凍結することで品質や鮮度、美味しさを守りながら、長期間冷凍保存することができます。
廃棄ロスの削減や効率的な生産ができるなど多大なメリットが生まれるので、食品加工場や飲食店、スーパーなど様々な場所で急速凍結機の導入が進んでいます。
例えば、うどんやパスタ、そばなどの麺類を出す飲食店では、生麺は売れ残ると保存が難しいです。
しかし、急速凍結した冷凍麺ならば、必要な分を必要なときにいつでも使うことができます。
生麺と変わらない美味しさの麺を、ロスを出さずに提供することができます。
またケーキ屋では、毎日たくさんの種類のお菓子を作ることは大変な労力です。
急速凍結することで1日に数種類のケーキをまとめて作り冷凍保存し、必要な分を解凍して提供することができます。
効率よく多くの種類のお菓子を生産することが可能になります。
急速凍結機には、液体窒素を用いた凍結方法以外にも様々な方法の機械があります。
液体窒素は扱いが難しく、保管にもきちんとした施設が必要なので、大型の食品工場などで主に使われています。
導入しやすく、操作が簡単な急速凍結機があるのでご紹介します。
一般的な冷凍庫と同じように、冷風を用いたエアーブラストの凍結機。
-30℃~-40℃の冷風を吹きつけて凍結させます。
中でも、アートロックフリーザーはマイクロウインドシステムを搭載しており、食材の劣化(乾燥・身割れなど)を限りなく抑えることができます。
冷風による表面の飛散や乾燥を防ぐことができるので、冷凍前と変わらない状態を保持することができます。
冷風と磁石と電磁波を融合させた凍結機。
エアーブラスト同様-30℃~-40℃の冷風と、磁気の力で品質の良い冷凍が可能です。
リ・ジョイスフリーザーは、-35℃に冷却したアルコール液の中に真空パックした食品を漬けて凍らせます。
液体は空気に比べて熱伝導率が20倍高いので、凍結速度が速く、効率よく冷やすことができます。
また、液が攪拌しているので冷凍ムラを防ぎ、均一に凍らすことができます。
まとめ
瞬間凍結の種類とその温度はご理解いただけましたでしょうか?
極めて低い温度で冷やすことで、瞬時に凍結させることができます。
瞬時に凍結させる技術は、食品の冷凍分野において、特に活用されているので、私たちの生活の一部として根付いていると言えるでしょう。