ブラストチラー(急速冷却機)の有効な使い方とは?【安全と美味しさを守る】

こんにちは。急速冷凍機の厳選比較サイト「春夏秋凍」のライターチームです。
食品を扱う上で、一番気を付けることは何でしょうか?
何といっても、安全性です。暖かくなり細菌が繁殖しやすくなる季節、食中毒などさまざまな危険性がでてきます。加熱させれば細菌は死滅しますが、それだけでは不十分。加熱と同じくらい冷却にも注意をしなければなりません。
安全な食を提供するためには、調理した食品を急速に冷却させることが必要不可欠です。
目次
ブラストチラーとは
ブラストチラーは、調理後の食品を短時間で0〜10℃程度まで冷やすための機械です。強い冷風で90℃近い高温の料理も素早く冷却できるため、細菌の繁殖を防ぎながら、風味や食感を保ったまま保存・提供できます。
※関連記事:ブラストチラーとは?ショックフリーザーとの違いやメリット・デメリットも解説
ブラストチラーの3つの機能
ブラストチラーの機能は、おもに3つあります。以下で、それぞれの機能について解説します。
1.芯温制御機能
食品の中心温度があらかじめ設定した値に達すると、自動的に冷却から保冷運転へ切り替わる機能です。これにより、過度な冷却による品質低下を防げます。
2.タイマー制御機能
芯温制御とは別に、設定した時間が経過すると冷却から保冷運転に移行する機能です。芯温センサーを食品に差し込むことで、内部温度を正確に測定できます。
3.冷却モード変更機能
食品の種類に応じて、風量・風速を調整できる機能です。崩れやすい柔らかな食品は風量を抑えて、密度の高い食品は風量を強めて冷却するなど、最適な条件で冷やせます。
ブラストチラーの使用目的と性能

ブラストチラーは、調理したての食品を急速に冷却させることを目的とした機械です。90℃近くの温かい食品を、一気に0~10℃前後まで冷却させます。
なぜ、急速に冷却させなければならないのでしょうか?
適切な加熱調理をすれば細菌は死滅するので、すぐに食べることができれば安全性に問題はありません。しかし、調理してから提供するまでに時間が空いてしまうと、空気中にはいたるところに細菌が潜んでいるので、どんどん細菌に汚染されていきます。細菌が繁殖、増殖しやすい温度帯は約10~60℃です。
自然冷却は、この温度帯をゆっくりと通過するので、冷却する間に食中毒となる細菌が付着し、繁殖する危険性が高まります。
ブラストチラーで冷却させることで、細菌が活発に活動する温度帯を素早く通過させ、食品の安全性を守ります。
また、加熱調理した食品は時間が経てば経つほど美味しさが失われてしまいますが、急速に冷却することで、風味や美味しさ、栄養価を保つことができます。
ブラストチラーで急速冷却させた食品は、冷蔵庫に移してから4~5日の保存ができ、再加熱した際に作りたての味を提供することができます。
ブラストチラーの有効な使い方
ブラストチラーは、どのような場所で使われているのでしょうか?
惣菜を扱うデリカショップや弁当屋、お菓子屋などで、出来上がった調理品の粗熱をとる用途や、サラダやお菓子類を適温に冷やす用途で使われています。
そしてなにより、大量調理が必要な厨房において、ブラストチラーは大きな役割を果たしています。ブラストチラーは、クックチルシステム導入の際に一般的に使われている機械です。

出典:http://houkoukai.exblog.jp/i2/
クックチルシステムとは、食品を「大量調理・提供」することを目的として開発されたシステムです。加熱調理した食品を急速に冷却することで細菌の汚染を防ぎ、再加熱した際に食品を安全に提供することができます。
事業所給食や病院など大量調理が必要な施設においては、加熱調理した食品への衛生管理が厳しく、十分な加熱だけではなく迅速な冷却が求められます。厚生労働省が発布している「大量調理施設衛生管理マニュアル」において、「30分以内に中心温度を20℃付近まで温度を下げること」と明記されています。
クックチルシステムは、このような衛生管理に対応することができます。調理した食品をすぐに提供できない場合や、大量の料理を作らなければならない場合に、品質を変えずに提供でき、安全な衛生管理のもと計画的な調理が可能です。
ブラストチラーは冷風を当てて冷却させるので、ほぼ全ての食品に対応することができます。小型の機械もあり設置しやすいので、さまざまな場所での導入が進んでいます。
ブラストチラーを導入することで、衛生管理だけではなく他にもメリットが生まれます。例えば、事業所給食の調理場では、以下のメリットが挙げられます。
- 調理する際にマニュアル化しやすく、食品の品質にばらつきがなくなり、一定の味を提供することができます。
- 計画的に作ることができるので、食材のロスをなくせます。
- 空いている時間を有効に利用して、調理作業を平準化することができます。
- 今までできなかった料理を提供することができます。
例えば、ポテトサラダなどは傷みやすく常温で置いておくことが危険でしたが、急速に冷却することで適温での提供が可能です。また、ゼリーやプリンなど、冷やすのに時間のかかるメニューの提供ができるようになります。
このように、ブラストチラーを導入することで、安全性だけではなく作業効率の向上や、提供できる料理のレパートリーが広がります。
ブラストチラーとショックフリーザーの違い
ブラストチラーとショックフリーザーは、同じ機能を持った機械だと思われている方が多くいますが、機能は異なります。
ブラストチラーは加熱調理した温かい食品を、3℃まで一気に冷却する機械であり、ショックフリーザーは3℃近くまで冷めている食品を、-18℃まで一気に冷凍させる機械です。
急速冷却させる機能と、急速冷凍させる機能という違いがあります。
ブラストチラーとショックフリーザーの機能を併せ持ち、冷却と冷凍を同時にできる機械も出回っています。
通常、加熱調理した食品を冷凍させる場合は予冷が必要ですが、温かい食品をすぐに冷却、長期保存する場合はそのまま冷凍することができるので、大変便利です。
また、冷凍すると食品内の水分が凍り細胞膜を壊してしまうので、味や食感が失われてしまいます。しかし、急速に冷やすことで冷凍による食品へのダメージを防ぐことができます。
このように、急速に冷却・冷凍することで、食品の安全性と美味しさを守ることができますが、注意したいこともあります。早く冷やすために強い冷風を当てるので、食品の水分量が減少することです。
また、一方から冷風を当てるので庫内の冷気を入れ替える必要があり、若干の乾燥を余儀なくされます。ですので、庫内の湿度を高くする工夫がされている機械や、いかに乾燥を防ぐかに特化した機械もあります。
アートロックフリーザーは冷却・冷凍の機能を兼ね備えているだけではなく、食品を取り囲むように風を当てることでムラなく冷却・冷凍することができ、庫内の冷気を循環させる必要がないので乾燥からも守ることができます。また、温かい食品を、そのまま冷凍することが可能です。
食品をどのように使いたいかによって、冷却するか冷凍するかを使い分ける必要があるように、用途は何なのか、必要な機能な何なのかを考えた上で、どの機械が良いか見極めることが大切です。
ブラストチラーは、急速に冷却させる機能に優れているので、食品を冷蔵庫や冷凍庫に入れる際の予冷に役立ちます。機械によって使用目的や用途の違いがあり、必要となる機能や性能は変わります。
ブラストチラーを導入するメリット
ブラストチラーを導入するメリットは、主に3つあります。以下で、それぞれのメリットについて解説します。
※関連記事:急速冷凍機の導入メリットとは?凍結方法の違い、補助金情報も解説
安全性の向上
ブラストチラーは、細菌が繁殖しやすい約10〜60℃の温度帯を短時間で通過させることで、食中毒の危険性を抑えます。庫内で冷風を当てて急速冷却するため細菌が繁殖しにくく、さらに庫内で冷却することで異物混入も防ぎ、安全性を高められます。
※関連記事:冷凍食品の安全性を保つ製造工程とは?規格基準や実際の手順を解説
厨房の調理効率の向上
粗熱をとらずに出来立ての食品をそのまま冷却できるため、一時的な置き場を確保する必要がありません。冷却時間を短縮できることで、空いた時間を別の作業に充てられます。また、冷却にかかる時間を予測できるため、調理工程の計画も立てやすくなります。
サービス品質の向上
自然冷却では時間がかかるため、水分や香りが失われやすく、パサつきの原因になります。ブラストチラーは水分や香りを保ったまま急速冷却できるため、再加熱してもふっくらと美味しい状態で提供でき、自然冷却よりも品質を維持できます。
まとめ
ブラストチラーは細菌の繁殖を抑え、食品の安全と美味しさを守るための優れた機械です。
誰もが安心して食べることができる食品を提供するために、加熱だけではなく冷却にも注意をして、正しい温度管理をする必要があるのではないでしょうか。