コールドチェーンの課題と2024年問題に対応する食品冷凍物流のメリット
コールドチェーンの課題が深刻化しているのをご存知ですか?
物流・運送業界の「2024年問題」によりドライバーの労働時間に上限が設けられ、一人当たりの走行距離が短くなることで「モノが運べない」という問題が懸念されています。
特に食料品への影響が大きいとされ、これまで当たり前に輸送できていたものが輸送できなくなる事態も想定されています。
この記事では、コールドチェーンの概要、2024年問題で想定される問題点、それに対する対策などを解説します。
目次
コールドチェーンとは
「コールドチェーン」とは、一貫した低温状態を保ちながら食品(食材)や医療品などを消費地まで輸送する物流形態のことです。
低温物流体系とも呼ばれ、これにより常温保管できない商品でも遠方への輸送や保存期間の長期化が可能になります。商品を保管する倉庫や輸送トラックなども、常温物流とは異なる仕様・設備のものが使われます。
コールドチェーンの温度帯は商品別に決められた温度で管理されています。
【温度帯の例】
冷凍品:-15℃以下
冷蔵品:2〜10℃
常温品:10〜20℃
コールドチェーンの市場規模は2,954億ドルを超える
The Business Research Companyの「Cold Chain Global Market Report 2023(コールドチェーンの世界市場レポート2023年)」によると、世界のコールドチェーンの市場規模は、2022年に2,705億5,000万米ドル、2023年には2,954億2,000万米ドルまで成長していることがわかっています。
一方で、世界における物流全体の市場規模は、2022年に5兆2,000億米ドルに達しています。
なお、一般社団法人 日本冷凍食品協会がまとめた発表によると、2021年における冷凍食品の工場出荷額は7,371億円だったことがわかっています。
出典:コールドチェーンの世界市場レポート2023年(The Business Research Company )
出典:物流市場:世界の産業動向、シェア、規模、成長、機会、2023-2028年の予測(IMARC)
出典:一般社団法人 日本冷凍食品協会❘令和3年(1~12月)冷凍食品の生産・消費について(速報)
冷凍温度帯のコールドチェーンの重要性
日本国内において、冷凍温度帯のコールドチェーンの重要性が増しています。
特に近年は、冷凍食品の品質向上や普及によりその需要は年々拡大傾向。2022年では、冷凍食品の国民一人あたりの年間消費量は23.9kgと、昭和43年の調査開始から過去最高を記録しています。
こうした状況に対応すべく、「冷凍品を扱うコールドチェーン」の重要性も高まっています。
【2024年問題】なぜコールドチェーンの見直しが重要視されているのか
物流・輸送業界には、「2024年問題」と呼ばれる課題があります。
2024年問題は、働き方改革関連法の施行によって、トラックドライバーの労働時間に上限などが適用されることをいいます。これにより、以下のような問題が懸念されています。
- 1日に運べる荷物量の激減
- トラック事業者の売上・利益の減少
- ドライバーの収入減 など
物流業界においてトラックドライバーの数は、すでに不足傾向にあります。そのため、将来的にはドライバー不足が深刻化し、「運びたくても運べない」もしくは「運べたとしても時間がかかってしまう」といった事態が起こる可能性があります。
コールドチェーンにおいても同様のことが起こる可能性が非常に高いです。
特に冷蔵による配送はコンビニやスーパーなどの日配品でもよく使用される温度帯。冷蔵の商品は保存期間が短いため、配送頻度が多くなる傾向にあります。
配送頻度が多いということは、それだけ多くのトラックやドライバーが必要だということです。逆を言えば、冷蔵のコールドチェーンの見直しによって配送頻度を減らすことができれば、ドライバー不足を大きく改善できる可能性があります。
こういった観点からコールドチェーンの見直しが重要視されています。
冷蔵のコールドチェーンのデメリット
国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」によると、運送能力の不足(荷物が希望通りに運べなくなる割合)は2024年に14.2%、2023年になると34.1%になると言われています。その中でも特に影響が大きいとされる分野が食料品です。
実際にコールドチェーンを使って食料品を輸送している企業などでも2024年問題を問題視されています。これまでの冷蔵メインのコールドチェーンでは、将来的に食品の輸送すら難しくなる危険性があります。
特にコンビニやスーパーなど保存期間の短い冷蔵の日配品を中心に配送頻度の多いコールドチェーンを構築している業態ほど、影響が大きく出ると考えられます。
そんな「2024年問題」の課題解決へ向けて注目されているのが、「冷蔵」ではなく「冷凍」を前提としたコールドチェーンの構築です。
冷凍のコールドチェーンのメリットと導入事例
冷凍のコールドチェーンを構築することで、ドライバー不足が大きく改善される可能性があります。
冷凍にすることでコンビニなどのお弁当を店舗の冷凍庫で長期間ストックすることが可能です。長期間ストックできれば、1日に何度も配送する必要がなくなり、配送負荷を大きく下げることができます。
また、副次的な効果として生産効率向上に繋がるケースもあります。食品を冷凍することで廃棄が減り、フードロスの削減とそれに伴うトータルの原価削減も可能です。
製造においても、製造したものをストックし、必要なタイミングで出荷できるようになります。余裕のある時に製造して需要のある時に出荷する計画生産の形を取ることで、繁忙期と閑散期を平準化することにもつながります。
冷凍のコールドチェーンは、すでに以下のような大手企業で取り組みが進んでいます。
味の素冷凍食品株式会社
大手食品メーカー「味の素冷凍食品」では、フードロス問題を解消するために2050年までに中長期的な取り組みを実施しています。
なかでも冷凍食品は、すべての商品に長期保存試験を行い、賞味期間を1年から1.5年にすることを実現しています。
参照:味の素冷凍食品株式会社|賞味期限延長によるフードロス削減
株式会社ニチレイ
ニチレイは、日本で最初に冷凍事業を始めた企業です。創業以来“冷力”に力を入れた事業を展開しており、フードロス削減に向けた取り組みにおいても、以下のようなコールドチェーンの見直しを実施しています。
- 作り立てのおいしさを保ったまま、長期保存ができる冷凍食品を生産
- 冷蔵倉庫での急速冷凍・解凍で需要調整
- 低温物流拠点と全国を網羅する輸配送ネットワークで高品質な低温物流サービスを提供
ローソン
ローソンでは、高品質な冷凍食品を取り扱うために「冷凍おにぎり」販売の実証実験を開始しました。ローソンの冷凍おにぎりは、個別包装のおにぎりを冷凍のまま販売する商品です。
高品質な冷凍商品が増えれば、頻繁に配送することが難しい過疎地域などへの対応やコンビニ出店も可能になります。
冷凍食品の高品質化が進んでいる
冷凍は美味しくないという印象を持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、昔と比べ、冷凍食品の品質は向上しています。近年では、ミシュランで星を獲得した高級飲食店や有名店が冷凍食品の販売に参入する、といった事例も増えています。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000118864.html
こうした高品質の冷凍食品の製造・販売が可能になった背景には、冷凍技術の進化が大きく影響しています。
従来の冷凍技術の場合、凍結中に細胞が壊れてしまうことによって、品質が落ちてしまっていましたが、現在ではこうした問題を解消し、食品の食感や風味、栄養を落とさずに冷凍することが可能となっています。
最新の冷凍技術はただ保存期間を延ばすための技術ではなく、現地で食べる味をどこでも楽しめるようにするための技術となっています。
出来立ての美味しさを再現する急速冷凍機「アートロックフリーザー」
アートロックフリーザーはAIによる自動制御や微細な冷気を生み出すマイクロウインドシステムにより高品質な冷凍が可能です。
食材へのダメージを極小化し、あらゆる温度の食品を急速冷凍することができるため、これまで冷凍が難しいとされていた食材などでも対応ができます。
まとめ
コールドチェーンの市場規模は、国内外で大きく拡大しています。今後もさらなる需要の増加が考えられるでしょう。
また、日本国内の物流業界では、2024年問題などへの課題解決へ向け、従来の冷蔵中心から冷凍のコールドチェーンへの見直しが重要視されています。実際に様々な企業が取り組みを始めている状況です。
今後の食品物流は冷凍のコールドチェーンへの対応も視野に入れた取り組みが必要になると考えられます。また、冷凍技術の進化によりこれまで冷凍できなかった食材も冷凍できるようになっています。
新しい冷凍技術に興味のある方はぜひ「アートロックフリーザー」の詳細もご覧ください。