飲食店の人時生産性を上げるには?有効な手段や注意点を解説します。
近年では、少子高齢化にともなう労働人口の減少やコロナショックなどの影響で、飲食店における人手不足が生じやすくなっています。
こうしたなかで、飲食店が売上減少や付加価値の低下などの問題を解決するには、効率性や生産性を評価する指標の一つである「人時生産性」の向上に着目した対策が効果的です。
この記事では、人時生産性の概要のほか、飲食店における人時生産性の向上が重要とされる理由を解説します。
記事の後半では、飲食店が人時生産性を上げる方法と注意点、飲食店における人時生産性の向上に役立つ急速冷凍機を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
人時生産性とは
人時生産性とは、スタッフ1人が1時間で生み出した粗利益(成果)を指します。粗利益とは、売上高から原価(諸経費)を引いた数字です。
人時生産性は、飲食業などの店舗や事業所において、効率性や生産性を評価する指標の一つで、効率的なオペレーションができているかをダイレクトに分析できる利点があります。
人時生産性が高ければ高いほど、効率的に利益を生んでいると評価できるわけです。
人時生産性の計算方法
人時生産性は、以下の計算式で求められます。
- 人時生産性 = 粗利益(売上高 - 諸経費)÷ 総労働時間
中小企業庁が公表している「中小小売業・サービス業の生産性分析」によると、中小企業による飲食店の場合、人時生産性の平均は1,900円程度です。
また、農林水産省の資料「日本の外食産業の生産性に関する実態調査報告」によると、中小企業よりも大手企業の飲食店のほうが、人時生産性が高い傾向があることも分かっています。
これは、大手企業の方が、業務の標準化などを通じて業務効率化に成功していることが多いためと考えられます。
参考:2)日本の外食産業の生産性に関する実態調査報告(農林水産省)
人時生産性と労働生産性との違い
人時生産性と近い指標として「労働生産性」というものがあります。
- 人時生産性:「労働者1人が1時間でどれだけの粗利を生み出しているか」の指標
- 労働生産性:「投入した労働量に対して、どのくらいの成果を上げられたか」の指標
両者を比べてみると、人時生産性が「労働者1人」という個人に着目した指標であることがわかります。
また、「人時売上高」という指標もあります。人時生産性と人時売上高の違いは、計算式を並べてみるとわかりやすいです。
- 人時生産性 = 粗利益(売上高 - 諸経費)÷ 総労働時間
- 人時売上高 = 売上高 ÷ 総労働時間
人時生産性は、計算式の分子に「粗利益」が用いられますが、人時売上高は「売上高」のみが用いられるため、人件費や原材料費などのコストは考慮されていません。
飲食店が人時生産性を高めることが重要な理由
飲食店における人時生産性の向上は、以下2つの理由でとても重要です。
人件費の上昇に対抗できる
一般的な飲食店の場合、人件費率は30%前後です。
この数字は、他業種と比べて高い傾向にあります。また、近年では、著しい売り手市場で人員確保するために、多くの飲食店が時給を上げざるを得なくなっています。
こうした環境で、飲食店が人時生産性を高められると、効率的なオペレーションが可能になり、人件費の抑制にも繋がります。
人材不足を解消できる
冒頭でも触れたとおり、日本の労働人口は、少子高齢化の影響で減少の一途を辿っています。
厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和5年9月分)について」を見てもわかるように、飲食サービスにおける新規求人倍率は、調理に従事する人が4.34倍、接客や給仕に従事する人が5.14倍となっています。
この数値は、求職者の数よりも求人数のほうが多いことを表しており、全職種の平均値である2.19倍と比べても非常に高い状況です。
そのため、業界認知度の低い小さな飲食店などの場合、採用活動がなかなかうまくいかず、人手不足から営業自体が難しくなるケースも増えています。
こうしたなかで、最小限のスタッフで営業を続けるには、人時生産性を高めて効率的なオペレーションを実施する必要があるでしょう。
飲食店が人時生産性を上げる方法
では人時生産性を上げるにはどのような方法があるのでしょうか?
人時生産性を上げるためには「労働時間を減らす」「粗利益を増やす」のいずれかの対応が必要です。
業務の無駄をなくす
労働時間を減らすために最初に実施したいのが、以下の「ECRSの原則」を意識した業務の棚卸しです。
- Eliminate(排除)
- Combine(統合)
- Rearrange(順序入れ替え)
- Simplify(簡素化)
例えば、作業動線や業務自体に無駄がないかをチェックしたり、より効率的なオペレーションが作れないかを調べたりします。
また、標準化が可能な業務をマニュアル化すると、業務の無駄が省けるだけでなく、新人のレベルアップなどによって、業務効率化をより進めやすくなるでしょう。
粗利益の拡大を図る
人時生産性を向上させるためには、「粗利益」を増やすことも大切です。
実際に以下のような「売上を上げる取り組み」、「原価を抑える取り組み」などによって、粗利益を増やすことができます。
【売上を上げる取り組み】
- 商品やサービス力などの付加価値を高め価格を上げる
- デリバリーやテイクアウト商品を導入する など
【原価を抑える取り組み】
- まとめて仕入れることで食材の仕入れコストを抑える
- 廃棄ロスを減らすことで仕入れコストを抑える
これらの取り組みを実施することで、人時生産性や粗利益の向上を図ることができます。
しかし、人時生産性の向上だけを考えてしまうと、場合によっては弊害が生まれることもあります。
次の章では飲食店が人時生産性の向上に取り組む際の注意点をご紹介します。
飲食店が人時生産性向上に取り組む際の注意点
飲食店が抱える人手不足や人件費の高騰などの問題を解消するには、ここまで紹介したとおり、人時生産性を高めることが大切です。しかし、人時生産性の向上ばかりにこだわりすぎると、場合によっては弊害が生まれることもあります。
例えば、大手の飲食店で導入されている注文用のタッチパネルは、注文をとるためのスタッフを削減できることから、店側にとっては非常に便利なシステムであると考えられがちです。
ところが、タッチパネルの操作方法がわからないお年寄りや障害者などの方々にとっては、非常に使いづらく、サービスの品質低下と感じられるものになる可能性があります。
別の例では、コストを抑えるためにアルバイトの数をギリギリまで減らしたところ、提供までの時間が長くなってしまいました。お客様をお待たせしてしまった結果、顧客満足度が下がりリピートが減ってしまったというケースもあります。
このように、店側が人時生産性の向上を図ることはとても大切ですが、それだけでは顧客満足度に問題が生じる可能性があります。そのため、人時生産性を高めていく際には、店舗のコンセプトやホスピタリティなどを意識した上でお客様からの評価が下がらないよう注意することも重要です。
人時生産性の向上には急速冷凍機の導入も有効
飲食店がお客様の評価を変えずに人時生産性を向上させる手段として急速冷凍機の導入は非常に有効です。
主に「作業効率の改善」、「仕入れコストの削減」、「安定した品質の商品提供」などの効果が得られます。
冷凍技術の進化によって、プロの料理人が食べても冷凍と気づかないレベルでの品質の再現が可能となりました。今ではミシュランを獲得している客単価数万円の店舗でも急速冷凍機が使われている程です。
急速冷凍機を導入すると、余裕がある時間帯を有効活用し、仕込みや調理をまとめて対応することが可能となるため、まとめて仕込むことで作業効率が上がったり、料理人がいない日でもアルバイトがいつも通りの品質の商品を簡単に提供できるようになります。
また、食材の長期間保存が可能となるため、安いタイミングにまとめて仕入れを行い仕入れコストを下げることができます。
これらの活用方法を取り入れることで作業効率の向上や仕入れコストの削減につながり、人時生産性を大きく改善することが可能です。
なお、従来型の急速冷凍機は、強い冷気を1つの方向から当てるシステムのため、食材の乾燥・酸化・変色・身割れなどが起こりやすい傾向がありました。
こうした冷凍の課題を解決したのが、「アートロックフリーザー」です。
アートロックフリーザーは、優しい冷気で食材を取り囲んで高速でするため、食品へのダメージを最小限に抑えることができます。
また、AIの自動制御(スマートフリーズ)が搭載されており、あらゆる温度の商品が冷凍可能です。これにより焼きたて・揚げたて等の熱々の食材を冷まさずそのまま冷凍し、衣のサクサク感や焼き目の香ばしさなどを閉じ込めることで解凍後も出来立ての美味しさを提供することができます。
まとめ
飲食店が人時生産性を上げるには、顧客満足度などの定性的な評価が下がらないよう注意しながら、業務の無駄をなくし、粗利益の拡大を図る必要があります。
特に、業務効率化の手段としては、調理現場の負担を減らし給仕までのオペレーションをシンプルにする急速冷凍機の導入が有効です。
アートロックフリーザーの特殊技術を使えば、おいしさを損なわない冷凍保存が可能になります。アートロックフリーザーにご興味がある方は、以下のページからぜひお問い合わせください。