冷凍焼け=霜は誤り?メカニズムと対処法を徹底解説!
冷凍庫で食材を保管していたら、いつの間にか霜がびっしり。変色や嫌な臭いがあり、風味、食感も悪くなってしまった。
業務用冷凍庫ではなく急速冷凍で冷凍したのに、どうして?こんな経験がありませんか?
これらの冷凍庫内で起る品質劣化の原因として代表的なものが「冷凍焼け」です。
冷凍焼けは、冷凍庫内で食材が乾燥・酸化することで品質劣化する現象で、保管環境次第では、急速冷凍機で冷凍しても、冷凍焼けが起こります。
計画生産や冷凍商品の販売のために急速冷凍機を取り入れたのに、保管中に冷凍焼けして品質劣化してしまっては台無しです。
今回は、冷凍焼けについて、正しいメカニズムと冷凍焼けさせずに美味しさを保つ方法を解説します。
目次
冷凍焼けとは
「冷凍焼け」とは、食材の乾燥と酸化によって品質が劣化してしまう現象です。
冷凍庫内の温度上昇で食材の水分が溶け、その水分が気化すること(昇華)で起こります。
細胞の中のもともと水分があったところに空間ができ、その隙間に空気が入り乾燥・酸化することで品質が劣化。
再び温度が下がる時に昇華した水分が凍って食材の表面に硬い霜が付着します。
このように、冷凍庫内の温度変化で昇華を繰り返すことで、食材の品質が劣化して表面に霜が張り付いた状態になるのが冷凍焼けです。
「霜=冷凍焼け」は誤り!霜ができる原理を正しく理解
また、「霜」という部分だけを切り取って、「霜がついているから冷凍焼けだ」と捉える人がいますが、それは場合によって間違った解釈です。
例えば、デイブレイクの特殊冷凍機「アートロックフリーザー」で食材を冷凍すると、冷凍機から取り出す時にきめ細かい霜がつくことがあります。
この霜は、食材の表面の水分が凍ってできたもので、細胞内の水分が昇華したものではなく、冷凍焼けではありません。
むしろ、凍結速度の速さから、空気中に水分を逃さず食材の表面にとどめられているとも言えます。
また、熱い食材を入れた時には、湯気が庫内を循環し、食材の表面に付着する場合もありますが、これも冷凍焼けとは異なります。
これらの霜は、よく見ると雪の結晶のような形をしていて、パウダースノーのように軽く、払うとすぐに取れて消えてしまいます。
一方で冷凍焼けの霜は食材に硬く張り付いて取れません。
同じ霜でも、温度上昇によるものなのか、凍結時に温度が下がることで出来る霜なのか、発生する原理が全く異なるのです。
冷凍庫の中で温度変化は、デフロストで起こる
冷凍焼けの原因は冷凍庫内の温度変化が原因と解説しましたが、業務用冷凍庫に入れているのに、温度変化が起きるのはなぜでしょうか。
それは、業務用冷凍庫の多くは、「デフロスト」という霜とり運転が行われるためです。
デフロストは、一時的に冷却ファンが停止してヒーターで温度を上昇させて霜を除去する運転で、1日数回、1回あたり30分程度が一般的です。
デフロストで5~10℃温度が上昇するため、冷凍庫内が0℃近くまで上昇することもあります。
デフロストの回数や時間は冷凍庫によって異なり、扉の開閉回数や外気温など様々な外的要因が関係しているため管理をするのは難しいです。
冷凍食材にとってはデフロストの温度変化がダメージになる側面も否めませんが、冷凍庫を正常に稼働させるために必要な機能なため、デフロストを加味した保管状態にするのが適切です。
何も対策を取らずデフロストによる温度変化で起きた冷凍焼けを放っておくと、ますます品質劣化が進んでしまいます。
もちろん、デフロストに限らず、冷凍庫の扉を開けたまま作業をしたり、一気に沢山の食材を冷凍庫に入れたりしても、冷凍庫内の温度は上昇し、冷凍焼けの原因に繋がります。
急速冷凍しても起こる?
ここまで説明した通り、冷凍焼けは保管中の温度変化が原因で発生する事象です。
そのため、急速冷凍機や特殊冷凍機などの優れた冷凍機で凍結しても、保管環境を間違えれば冷凍焼けは起こります。
急速冷凍機は細胞破壊を極小化してうまみ成分を逃さず、冷凍前の品質を再現する冷凍技術です。
食材本来の美味しさを維持できるとして昨今注目されていますが、急速冷凍機はあくまで凍結する機械。
急速冷凍機で凍結させた後、何の対策もせずにデフロスト付きの冷凍庫で保管すると、温度変化で冷凍焼けを起こしかねません。
適切な保管環境を整えることは、急速冷凍機を使用する場合でも必ず必要な工程です。
一度冷凍焼けしてしまった食材を戻す方法はある?
冷凍焼けをしてしまった食材を元に戻す方法は、残念ながらありません。
急速冷凍機で再び凍らせたらよいのでは?と言われることがありますが、一度酸化して失われた風味や食感が元に戻ることは、どんな食材でも難しいです。
加熱調理して使用する食材なら多少紛れるかもしれませんが、食材の一番良い状態と比べれば品質は落ち、解凍するだけで召し上がる食材・食品であればなおさら顕著に劣化が感じられるでしょう。
また、長期保管しなければ起こらないという訳でもありません。
先ほどお伝えした通り、一般的な業務用冷凍庫のデフロスト運転は1日に数回行われますので、数日間の保管であっても、冷凍焼けが起きることはあります。
このように、温度変化に弱く繊細な冷凍食材は、凍結完了した時点から、常に保管環境に気を配ることが求められます。
美味しさを保つポイントは、真空と冷凍庫内環境
ではどうすれば冷凍焼けを防げるのか。ポイントは、
①保管用の業務用冷凍庫内の環境を整えること
②十分に真空すること
の2つです。
①は、デフロストがない低温(‐30~40℃程度)の冷凍ストッカーを保管用に用意するか、デフロストのある業務用冷凍庫でも、できるだけ温度変化が起こらないように工夫すれば影響を抑えられます。例えば、少しでも冷気を逃さないように、真空した上からさらに袋で包んであげるなど。ただし、方法は環境や食材によって異なりますので、研究が必要です。また、出来るだけ開閉を減らす意識を持つようにしましょう。
②は、凍結後に真空をしっかりかければ、温度変化で食材がわずかに溶けてしまったとしても、空気に触れることがないため酸化を防いでくれます。デイブレイクの研究では、真空を適切に行うことで、デフロストのある業務用冷凍庫で保管しても、冷凍焼けが極めて少ない状態を保てた事例があります。その実験では、アートロックフリーザーで凍結した後、数週間一般的な業務用冷凍庫で保管していましたが、ほとんど変色せず、霜もつかない結果となりました。このように、しっかりと真空し、できるだけ温度変化のない環境を整えれば、冷凍焼けによる品質劣化は圧倒的に少なくなります。
まとめ
いかがでしたか?冷凍焼けの原理を紐解いていくと、「保管環境がいかに大切か」が分かります。
美味しい冷凍食品を消費者へ届けるためには、急速冷凍機を取り入れるだけでなく、保管環境も行き届かなければ実現できません。
冷凍焼けのメカニズムや、急速冷凍や特殊冷凍でも冷凍焼けのリスクがあることを正しく理解して、保管食材本来の美味しさのまま長くとどめる方法を意識していただきたいと思います。
デイブレイクでは、特殊冷凍機「アートロックフリーザー」の提供のほかにも、今回解説した保管環境の指導をはじめ、食材選定から加工調理、凍結、保管、解凍まで、一連の工程における最適な方法をお客様とともに研究開発しています。
長年の食材研究データを元に一つひとつの課題を解決して理想の冷凍商品開発に導いてまいりますので、冷凍にお困りの方は、お気軽にご相談ください。