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【機能と課題を解説】食品を微凍結するパーシャルフリージングとは

冷凍した食品を解凍せずに調理することができると知っていましたか?

パーシャルフリージングという冷凍技術を使うと、通常の冷蔵よりも長期保存することができます。さらに解凍せずに調理することができるため無駄な解凍時間を省くことができるので、解凍によって起きてしまう品質劣化を防ぐことができます。

今回は、近年身近になっているパーシャルフリージングについてお伝えします。
導入を検討されている方はパーシャルフリージングの機能や問題点をしっかり捉えながら読んでみてください。

パーシャルフリージングとは

パーシャルフリージングとは、0℃~-3℃で食品を凍結する方法のことを指します。
最近では家庭用冷蔵庫にも備え付けられている機能で、JISの冷蔵庫規格では-3℃付近と規定されています。

-3℃とは食品の中に氷ができはじめるぐらいの温度なので、食品はカチカチに凍りません。この状態は「微凍結」と表現され、食材の細胞の周りにある外液が少し凍る程度で留める冷凍方法です。

レモンとミント
出典:https://bought-boat.com/magazine/articles/1013

パーシャルフリージングの機能

パーシャルフリージングの機能
出典:https://online.nojima.co.jp/4549980203781/1/cd/

通常の緩慢冷凍では、食品内の水分が凍る際に氷の結晶が細胞を破壊してしまい品質が損なわれてしまいます。

微凍結をすることによって、食品の細胞自体は傷つけずに済むので、通常の緩慢冷凍よりも食品の損傷を抑えることができ、おいしさを維持することができます。

緩慢冷凍でストックしていた肉や魚を解凍して調理するよりも、パーシャルフリージングで冷凍した食品を調理するほうが、食品の品質を保てます。

保存可能日数を増加させる

通常の冷蔵と比較すると、パーシャルフリージングで冷凍した食品のほうが数日長く保存することができます。

肉や魚などの生鮮品の場合、冷蔵で約3日、チルドで約4日、パーシャルなら約7日、
カレーやミートソースなどの調理品の場合、冷蔵で約3日、チルドで約4日、パーシャルで約5日保存することができます。

パーシャルフリージングと他の比較表
出典:https://onikunavi.com/?p=1

解凍せずに調理できる

パーシャルフリージングは食品の周りを微凍結する冷凍方法なので、解凍せずとも包丁で切ったり、調理することが可能です。
これによって肉や魚をブロックのまま凍らせても、解凍せずに必要な分だけ切り分けて使用することができます。

また、ミートソースやカレーのように液状の食品を冷凍しても、同様に必要な分だけ取り出すことが可能です。毎回解凍する必要がないので、使用しない部分を傷めることなく保存することができます。
解凍する手間を省きながらも食品の状態も良好に保つことができる一石二鳥の技術です。

様々な冷蔵・冷凍技術の比較、その違いとは

天秤

一般的な冷蔵技術

JIS規格では10℃以下での保存と定められています。最も身近にある技術なので気軽に使うことができますが、果物、野菜、肉類や魚類は冷蔵だと3日ほどしか持たず、長期保存はできません。

チルド

チルドとはJISの冷蔵規格で0℃付近と規定されており、食品を凍結寸前まで冷却して保存する方法です。冷凍させたくない果物・野菜、発酵食品、練り物などの保存に適しています。通常の冷蔵よりも食品の鮮度を長期間保つことができるのが魅力だといわれています。

一般的な冷凍技術(緩慢冷凍)

一般的に家庭用冷蔵庫などで使用されている温度はJISにより-18℃と規定されてます。この温度帯になると、細菌や酵素の働きを止めることができるので食中毒などを防ぐことができます。
しかし、冷凍するのに長時間かかったり、解凍後の食品自体の品質を下げてしまうことが課題としてあげられます。

様々な冷蔵・冷凍技術の比較

パーシャルフリージングの課題・問題点とは

暗い廊下

最大保存期間の短さ

パーシャルフリージングは冷蔵やチルド冷凍と比較すると保存期間は長くなりますが、一般的な緩慢冷凍と比較するとやはり保存日数は短くなってしまいます。
大量に安く仕入れた食材や、空き時間に作ったストックを保存しようとするには難しいかもしれません。

解凍後の品質劣化

-1℃~-3℃の温度帯では細菌の増殖を抑制することができます。しかし一部の酵素は働いているため代謝系のバランスが取れず、食品によってはたんぱく質の変質や組織の損傷がみられます。また、氷結晶ができやすい温度帯であることから解凍後は腐りやすいとも指摘されています。
冷凍した状態のまま調理をするには適していますが、解凍したものを調理に使用すると、料理の味にも影響を与えてしまうかもしれません。

課題・問題点への解決策

パズルピースと電球のイラスト

冷凍せずに長期間品質を保てる 氷感技術

氷感

氷感」とは、従来の冷蔵技術に高電圧、低電流、一定周波数の電気エネルギーを安全かつ安定して加え、食材に有益な効果を与えます。
電圧を与えることによって食材を凍結しにくくすることができ、10℃~-10℃の低温化でも非凍結保存を実現することができます。

肉類や魚類だけでなく、野菜や果物まで鮮度を落とさず長期保存することができるため、パーシャルフリージングの課題でもある保存期間を解決することができます。

品質を保ちながら冷凍することができる、急速冷凍

急速冷凍とはその食品の温度が低下する過程で最大氷結晶生成温度帯(-1℃~-5℃)を短時間のうちに通過する凍結方法のことを指します。栄養や食感・味も冷凍前とほぼ変わらない状態で凍結することができ、生の食品だけでなく調理した料理でも熱いまま冷凍することが可能です。

一般冷凍と急速冷凍の比較

急速冷凍後の保管期間は、冷凍庫で保管することによって2週間から長い食品で1年程度保管することが可能になります。

調理する際に解凍を行う必要はありますが、短時間で冷凍しているため品質劣化はほぼ起きません。パーシャルフリージングの課題としてあげられる解凍後の品質低下や保存可能期間の短さを解決できる冷凍方法です。

まとめ

今回はパーシャルフリージングをはじめ、他の冷蔵・冷凍技術についてもお伝えしました。
パーシャルフリージングは一般の冷蔵や緩慢冷凍と比較すると食品の品質を数日長く保てます。しかし、一方で長期間保存には向かず、解凍後の品質劣化も指摘されています。

様々な冷蔵・冷凍技術を比較し、メリット・デメリットを比較しながらどの技術を導入するべきなのか検討したいですね。
また、扱っている食品によってもどの保存方法が最適なのかは異なってくるので、実際に冷凍して比較してみることをお勧めします。

この記事の監修者

木下 昌之

デイブレイク代表
木下 昌之

70年続く老舗冷凍機屋の3代目。2013年、特殊冷凍テクノロジー×ITを軸に国内唯一の特殊冷凍機の専門会社としてデイブレイクを創業。各種メディアや書籍「フードテック革命」にてフードテック企業の代表格として紹介されるなど、「急速冷凍」をコアに食品流通業界の根本改革に邁進中。

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