クックチルシステムとは?さまざまな課題を解決!【メリット・デメリット】

クックチルシステムは、より安全な調理、効率的な食事提供ができる調理法であることをご存知でしょうか?

クックチルとは、新調理システムの一つです。食材を調理したのち急速冷却して保存しておき、タイミングに合わせて再加熱して提供します。

従来の調理してすぐに提供する「クックサーブ」と比べると、食中毒の予防や効率化に役立ち、

「人手不足だけど人件費をかけたくない」
「特定の料理人でないと同じメニューを同じで提供できない」

などの悩みも、クックチルシステムで解決できます。

特に学校給食や病院食、セントラルキッチン、食品工場など大量製造する業者が採用する調理システムですが、昨今は小型の設備が登場し、飲食店や総菜店、菓子店などでもクックチルシステムが広く採用されています。

そこで、このページでは、食中毒予防や調理の効率化に欠かせない新調理システムとして今注目される「クックチルシステム」を紹介。

導入メリットやデメリット、実際の導入事例など、クックチルシステムを詳しく解説していきます。

広く取り入れられてきている新調理システム、知らないままだとコスト面などで損をしてしまっているかもしれません。

ぜひ最後までご覧いただき、時代に遅れぬようお店の課題解決に役立てていただきたいと思います。

近年普及する、新調理システム方式

慢性的な人手不足に伴う長時間労働や早朝出勤は、多くの食品事業者が抱える課題です。

また、特定の料理人にしか作れないメニューなど、調理の属人化も、効率を下げる要因とされています。

それらの問題を解決する調理システムとして、近年注目されているのが「新調理システム」です。

新調理システムの方式には、大きく3つ【クックチル・真空調理・クックフリーズ】があります。

こちらの図は、従来のクックサーブと比較した調理から提供までのフローチャートです。

クックチル

クックチルシステム、真空調理システム、クックフリーズシステム。いずれも人手不足の解消や効率化に役立つ調理システムですが、中でも今回は、近年普及が進む「クックチルシステム」に着目し、解説していきます。

クックチルシステムとは?クックサーブとの違い

まず、クックチルシステムの定義を説明します。

クックチルとは、食品を加熱調理した後すぐに急速冷却し(90分以内に中心温度3℃以下)低温で保存(0~3℃)、タイミングに合わせて料理を再加熱して提供する調理法です。クックチルで料理を保存できる期間は、製造日から最大5日間になります。

クックチルは、食品業界や医療機関で広く使用されています。

例えば、食品業界であれば調理済みの食品を販売されている企業が活用しています。医療機関では、病院の食事に使用されていたり災害時などの緊急時に使用されることもあります。

従来の調理法とは、なにが違うのでしょうか?

従来の調理法とは、皆さんが普段しているように、加熱調理した料理をすぐに提供するものです。

この調理法のことをクックサーブといいます。クックサーブにはさまざまなデメリット・問題点がありました。

●クックサーブシステムのデメリット

  • 加熱調理後2時間以内に提供しなければならない
  • 衛生管理が難しい
  • 保存ができないため廃棄が出やすい
  • ピーク時には人員が足りず提供が間に合わない
  • 同じメニューの提供には特定の料理人を常勤させるしかない
  • 調理のシステム化・マニュアル化が難しい

などが挙げられます。

クックチルを用いれば、これらの課題は解決します。

では、実際にクックチルにはどのようなメリットがあり、なぜそのような課題を解決できるのか、説明していきます。

クックチルシステムのメリットは?食中毒予防や効率化

クックチル_メリット

従来の調理法クックサーブとクックチルシステムでは、調理から提供までの過程が大きく異なりました。この違いは、主に4つのメリットを生み出します。

メリット①安全性が高い(食中毒の予防)

クックチルシステムでは、食品を急速冷却することで病原となる細菌、微生物が増殖しやすい温度帯である60~10℃を短時間で通過します。そのため、食中毒のリスクを下げ、安全性を確保できます。

クックチルシステムは食品を速やかに冷却するため、細菌の増殖を遅らせるため食品の鮮度を長持ちさせます。

また、食品を密封して保存することができるため賞味期限を長くなります。規定に従って時間や温度をしっかりと管理することで、最大5日間の保存が可能となります。

さらに、提供する直前に再加熱を行うため、再び人の手が加わることがありません。そのため食中毒などのリスクを抑えることができます。

メリット②効率が上がる

従来のクックサーブの場合、ピーク時に調理が集中するため、人員を増やしたり、朝早くから下ごしらえをするなど、調理者に負担がかかる調理体制でした。

クックチルシステムなら、保存期間がクックサーブに比べて最大5日間と大幅に長くなります。そのため、手の空いた時間に余分に料理を作っておくなど、状況に応じて調理することが可能です。

また、予め調理した料理を再加熱するだけなので、提供にかかっていた手間、時間が大幅に省けます。クックチルで調理がずっと効率的になります。

メリット③品質が安定する(メニューのマニュアル化・システム化)

クックサーブの場合、料理人の技術やセンスによって味の違いが出しまい、特定の料理人に負担がかかることも課題とされていました。

一方、クックチルシステムを導入すれば、レシピのマニュアル化・システム化ができ、品質が安定。また、特定の料理人にしか作れないメニュー、出せない味や、管理栄養士が考案したメニューなども、クックチルで保存しておけば、いつでも提供が可能になります。

特に、給食、病院食、高齢者施設など、栄養管理や安全性が重視される現場では、クックチルシステムが活躍しています。

セントラルキッチンで管理栄養士が考案したメニューを加熱調理・冷却し、サテライトキッチン(病院や施設の調理場)では再加熱と盛り付けを行うだけ、といったクックチルシステムを採用することで、安全かつ美味しい料理の提供を実現しています。

メリット④コスト削減

クックチルシステムでは、ピーク時の作業の平準化や休日出勤の軽減などにより、人件費を削減できます。

また、保存が可能なため、食材を運搬する頻度も少なくなり、運送費も削減。さらに、計画的に調理することで、廃棄を出さず必要最低限の食材費に抑えることができます。

クックチルシステムの導入によって効率が良くなるので、さまざまなコストを削減できます。

出典:https://carefood.jp/reason/cookchill.html

クックチルシステムには、安全性が高い、効率が上がる、品質が安定する、費用を抑えられる、という4つのメリットがありましたね。

では、クックチルシステムはどのような仕組みで成り立っているのか。クックチルシステムの調理工程や温度管理、保存期間を解説します。

クックチルシステムの温度管理、保存期間は?

クックチルシステムは、以下の5つの調理工程で進めていきます。

下ごしらえ、下準備

食材のカット、味付けなど。クックチルシステムで効率化できれば、空き時間を使って下ごしらえができるようになります。

加熱調理

盛り付け前の状態まで加熱調理を行います。加熱調理の段階でも、水蒸気と熱風を利用して加熱温度や時間を管理する「スチームコンベクション(スチコン)」を活用し、より生産性・安全性を高める方法もあります。

急速冷却

調理した食品をホテルパンなどに移してブラストチラー冷却機に入れ、冷風で急速冷却。
加熱調理から30分以内に冷却を開始し、90分以内に3℃以下まで冷却します。

チルド保存

0〜3℃の温度帯で最大5日間保存できます。

再加熱、盛り付け

75℃以上で1分間以上再加熱し、最終加熱から2時間以内に盛り付けて提供します。

では次に、クックチルシステムの病院・学校給食・飲食店での導入事例を見てみましょう。

導入事例の紹介【病院・学校給食・飲食店】

いままで挙げた4つのメリットがもたらした変化がわかる事例を2つ挙げていきます。

病院でのクックチルシステム導入事例

ある病院では、従来のクックサーブで病院食の提供をしていましたが、提供前に盛り付けをしなければならないため時間に余裕がない、配膳中に温度が下がるなどの問題点がありました。

そこで、クックチルを導入したところ、計画を立てて調理をしておくことで時間に余裕が生まれたそうです。また、安全に暖かい料理を提供できるようになり、患者さんが美味しいと言ってくれることが増えたそうです。

学校給食センターでのクックチルシステム導入事例

ある学校給食センターでは、一日一万食の給食を製造しており、スタッフは大量の料理を作るため早朝から勤務していました。また、学校に運ぶまでの間に温度が下がってしまうことが悩みでした。

クックチルシステムを導入した結果、保存がきくために早朝からの勤務も減り、スタッフの負担が軽減したそうです。そして、提供する直前に温めるために温度の心配もなくなったと聞きます。

病院や学校給食は、製造量が多く、安全性が重視されるため、特にクックチルシステムが活躍する現場です。最近では、これらの業者や食品工場に限らず、効率化・食中毒予防などのメリットから、小規模の加工業者や飲食店でのクックチルシステム導入も増えています。

飲食店でのクックチルシステム導入事例

ある飲食店では、ランチ営業の時間帯と土日は極端に忙しく、それ以外は暇になるバランスの悪さや、お店の味を再現できるのは数名の料理人だけで、その人たちが休みが取れないことに悩んでいました。

そこで、クックチルシステムを導入したところ、空き時間を活用して計画的に調理することで作業の平準化ができ、慢性的な人手不足が解消されたといいます。また、レシピのマニュアル化によって料理人への依存も軽減されたそうです。

さらに、10時~15時という主婦がパートタイムで働きやすい時間帯にまとめて調理を行うことで、女性が活躍できるお店として採用面での評判も向上し、人材募集がスムーズになったといいます。

クックチルの導入で実際にこのような変化があることがわかりました。メリットの多いクックチルシステムですが、クックチルにはメリットだけでなく、デメリットも一部あるのです。

クックチルシステムのデメリット・問題点

事例では、クックチルシステム導入のメリットを紹介しましたが、それだけではありません。

クックチルシステムの導入には気をつけなければならない点が2つあります。

クックチルシステム専用機器のスペースが必要

クックチルシステムに必須な急速冷却ですが、ブラストチラーという専用の機械が必要になります。大量調理をするにはそれなりに大きなブラストチラーがるので、スペースをとってしまいます。

また、急速冷却後の食品を低温で保管しておくスペースも必要となりますので、広いスペースが必要です。

クックチルシステムには相性の良くないメニューがある

クックチルシステムは急速冷却、再加熱というプロセスを伴うので、相性が悪いメニューがあります。焼き物や炒め物、揚げ物などの一部のメニューは相性が悪く、再加熱した際に品質を取り戻すのが難しいといわれています。

クックチルシステムを利用したいメニューとの相性を、事前に研究することをお勧めします。

メリットだけでなく、デメリットもあるクックチルシステム。

では、それらを理解した上でクックチルシステムを導入しようとした時に、費用はどの程度かかるのでしょうか。

次に、クックチルシステムの導入コストを解説します。

クックチルシステムの導入コストは?価格相場

クックチルシステムにおける機械は、冷風で冷却する「ブラストチラー方式」が主流です。

ブラストチラー方式のクックチルシステムに必要な機械は、温かい食品を急速冷却させるブラストチラー冷却器機。

ブラストチラーの価格は、小型の機械でも100万円以上、大型のものは500万円以上です。価格を抑えるなら中古品もネットオークションや中古専門店などで出回っていますので、中古の選択肢もあります。

ただし、中古の場合は保証期間が短く、故障時に多額の修理費用がかかるリスクがあります。使用状況や保証期間などを必ず確認するようにしましょう。

また、ブラストチラーの中には、急速冷却の機能に加え、

  • ショックフリーズ機能搭載で、冷却後そのまま冷凍できる機能
  • 75℃で再加熱できる機能
  • 低温調理機能

などが搭載されている機械もあるので、うまく活用できれば作業がさらに効率化されたり、この後紹介する「クックフリーズシステム」に役立つ場合があります。

ここまで、クックチルシステムについてご説明してきました。食中毒予防や効率化などメリットの多いクックチルシステムですが、最近、クックチルよりも注目を集めている調理法があります。

それは、冒頭でも少し触れた新調理システムのひとつ「クックフリーズ」です。最後に、クックフリーズシステムを紹介します。

鮮度と美味しさを保つ!クックチルシステムの活用方法は?

クックチルシステムは、食品を急速に冷却して保存することで高い鮮度と美味しさを保つことができる加工方法です。

クックチルシステムの主な活用方法を以下にまとめました。

  • 食材の選定
  • 調理方法の選定
  • 冷却方法
  • パッケージング方法
  • 保存方法

食材の選定

クックチルシステムは、鮮度や品質を保つためにも、できる限り新鮮な食材を選定しましょう。

また、調理前に冷却することが必要ですので、常温で放置することはやめましょう。

調理方法の選定

クックチルシステムは、調理した後に急速に冷却することが必要です。そのため、煮物や炒め物などの加熱調理は避けましょう。

オーブン調理や蒸し料理など、温度が低い調理方法がおすすめです。

冷却方法

クックチルシステムは、食材を急速に冷却することが重要です。

調理後、常温のままで放置してしまうと細菌が増殖してしまいます。そのため、水で冷やすや氷水に漬ける、または電化製品にクールダウン機能が付いている場合、クールダウン機能を活用して冷却することをおすすめします。

パッケージング方法

クックチルシステムでは、密封性が高いパッケージングが必要です。

密封性の高い袋や容器を使用し、真空状態にして密封するようにしましょう。

また、一度開封した場合は何度かに分けて長期的に食べるのではなく、できる限り早めに食べることで、鮮度と美味しさを保つことができます。

保存方法

クックチルシステムで調理した食品の保存方法は、冷蔵庫や冷凍庫で保存しましょう。

冷蔵庫で保存する場合は、1週間程度の保存ができます。

冷凍庫で保存する場合は、長期間保存が可能になります。

上記でご紹介した通り、クックチルシステムで美味しい食品を作るため、正しい使用方法を守り安全に保存することがとても大切です。

いま注目を浴びているクックフリーズとは

クックフリーズシステムは、クックチルシステムよりも効率的で、クックチルのメリットをさらに伸ばすことのできる調理法として、最近注目を集めています。

クックフリーズシステムとは、食品を加熱調理した後すぐに冷凍(90分以内に中心温度-5℃以下、120分以内に-18℃以下)し保存し、タイミングに合わせて料理を再加熱して提供する調理法です。

クックフリーズシステムは冷凍保存なので、保存期間は製造日から最大8週間。クックチルシステムは5日間なので、保存期間が圧倒的に伸びます。そのため、クックチルシステムよりもさらに効率が上がります。

さらに、消費期限が伸びるため、一度に配送できる量もさらに増え運送費が抑えられます。効率が上がるため人件費も抑えられ、クックチルシステム以上のコスト削減が可能です。

しかし、一般的な冷凍保存では、細胞が損傷を受け、冷凍前よりも味や食感が落ちてしまうなどの問題があります。

これを解決するのが、急速冷凍技術です。

急速冷凍技術を活用すれば、短時間の冷凍で、冷凍前と変わらない味・食感を再現できます。急速冷凍を取り入れたクックフリーズシステムを用いることによって、クックチルシステムよりもさらに効率的で費用対効果の良い調理が可能になるのです。

例えば、おせち料理のように特定の時期に大量生産する食品の場合、クックフリーズシステムを採用すれば数カ月前から計画生産でき、品質を保ちながら調理の負担を軽減できます。

最近では、ブラストチラーの役割も兼ね、作り立ての料理をすぐに急速冷凍できる特殊冷凍機も開発されており、それらを活用すれば粗熱を取るなどの複雑な工程もありません。

作り立ての味を解凍後に再現できるため、効率化やコストカットだけでなく、冷凍通販や宅配など、新たな販路開拓にも役立つ新調理システムです。

まとめ

今回の記事はいかがでしたか?

より安全な調理、効率的な食事提供ができるクックチルシステムについて、メリットや導入事例を踏まえてご紹介しました。

クックチルシステムでは、保存期間が長くなるため効率が上がりコストが削減できる、食中毒を予防し、より安全に安定した品質で提供できるといったメリットがありましたね。

また、クックチルのメリットをさらに伸ばすことのできる急速冷凍を取り入れたクックフリーズについても簡単にご紹介しました。

鮮度と美味しさを保つためにクックチルの活用方法をご紹介しました。クックチル使用のコツがあるので

近年、クックチルシステムやクックフリーズシステムといった新調理システムは様々な食品業者が取り入れられ、活躍しています。課題解決の選択肢として、利用してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

木下 昌之

デイブレイク代表
木下 昌之

70年続く老舗冷凍機屋の3代目。2013年、特殊冷凍テクノロジー×ITを軸に国内唯一の特殊冷凍機の専門会社としてデイブレイクを創業。各種メディアや書籍「フードテック革命」にてフードテック企業の代表格として紹介されるなど、「急速冷凍」をコアに食品流通業界の根本改革に邁進中。

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