食品の歩留まりとは?歩留まりを改善するために必要なことを解説
食品製造や加工に関わっている方で、歩留まりという言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?言葉は知っていても、どういう意味で使われるのか、また歩留まりが悪いと言われてもどのように改善したらいいのかよくわからないという方もいるかと思います。
歩留まりとは、食品だけではなく工業製品や企業での採用活動にも使われている言葉です。特に食品の場合は歩留まりと材料の原価には関係性があり、歩留まりが悪いと利益が大幅に減ってしまう可能性も・・・
そこで、3,000社以上からご相談を受けてきた当サイトが食品の歩留まりについて詳しくご紹介し、更に歩留まりの計算方法や改善方法についても解説いたします。
食品での歩留まりを改善したい方、歩留まりの計算方法について知りたい方は是非最後までご覧いただき、日々の業務に生かしましょう。
目次
歩留まりとは?
歩留まりとは、「ぶどまり」と読み、食品や工業製品など生産全般において原料の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた製品量の比率のことです。食品の場合は可食部の割合ともいえます。
一般的に歩留まりが高いほど原料の質が高く、製造工程が優れているといえます。
牛肉を例に、歩留まりの計算の仕方や歩留まりの改善方法についてみていきましょう。
牛が精肉になるまで
牛は生産者のもとで生産され、出荷されます。出荷された肉はいくつもの過程を経て精肉となり食卓へ並びます。
それでは、どのようにして精肉となるのでしょうか。
牛は枝肉に分割され、精肉となる
和牛の生産農家は2種類あり、繁殖農家と肥育農家があります。繁殖農家では生まれてから約8ヵ月間育てられ、家畜市場に出荷されます。
家畜市場でセリにかけられ、肥育農家で飼育されたのち出荷となります。
飼育された牛の出荷先は家畜市場などを通して、と畜場や食肉センターへ運ばれます。
そこで、牛から皮や骨、内臓を取り除き、背骨から2分割した骨付きの状態のものを枝肉といいます。また、枝肉から余分な脂肪や骨を取り除いたものを部分肉と呼びます。
枝肉は重量が400-600㎏あり、2メートル以上の大きさとなっています。一方、部分肉は枝肉を決められた方法で分割し「ヒレ」や「サーロイン」「かたロース」など部位ごとに13に分けられたものです。
部分肉はさらに加工され、精肉として小売店から家庭へ届けられます。
歩留まりは枝肉の格付けに使用
牛肉を取り扱っているところで、A5等級、A4ランクなどという表記があるのを見たことがあると思います。
牛肉には格付けがあり、基準は日本食肉格付協会が決めています。これは、食肉卸売市場や食肉センターにおける枝肉の公正な取引を推進するためのもので、全国統一されています。
牛肉の格付けは「歩留等級」と「肉質等級」という2種類の組み合わせによって決まり、全部で15種類あります。格付けの等級が高いほど牛肉の金額も上がります。
■歩留等級
歩留等級はA、B、Cの3段階あり、Bが基準となり、それより高いものがA、低いものがCとなります。枝肉から骨、余剰脂肪などを除き部分肉となるのですが、枝肉から部分肉が多くとれるほど等級が高くなります。
また、黒毛和種や褐毛和種、日本短角種、無角和種の4品種とこの4品種間の交雑牛は加算対象となります。
■肉質等級
肉質等級は5、4、3、2、1の5段階あり、牛肉の品質に応じた等級となります。3が基準であり、それより高いものが4または5、低いものは2または1で表します。
肉質等級は、脂肪の交雑、肉の色沢、肉の締まり及びきめ、脂肪の色沢と質の4項目から総合的に決められます。上記の歩留等級、肉質等級の評価によって、牛肉は格付けされ取引されるのです。
また、格付けの際に試食は行われず、見た目での判断となります。つまり、牛一頭から多くの牛肉が取れ、サシが良く入っていて肉の色が良く、締まりの良いものが評価は良くなり、A5やA4といった等級がつきます。
流通は部分肉が主流
いくつもの過程を経て精肉となることがお分かりになったかと思いますが、現在は部分肉での流通が多くなってきています。
その理由として、枝肉より部分肉で輸送した場合の輸送コストの低減があり、部分肉は骨や余分な脂肪が除かれるため、輸送コストは枝肉の場合に比べ3割から4割程度削減されるといわれています。
部分肉は真空包装されていることが多く、鮮度保持の面においても優れており、また、部位別の取引の増加や産地での加工による作業コストや生産性の向上等の点からも、部分肉での流通が今後も増加すると予想されています。
上記の点を踏まえると部分肉から精肉への加工も、産地で行った方が効率は良いと考えるかもしれませんが、精肉に加工してしまうと肉の可食期間が短くなってしまいます。
このように、牛の部分肉を真空包装したものの期限は保存温度0℃で約2か月であるのに対し、精肉に加工してしまうと0℃で7日しかもちません。
そのため、必要な分だけ部分肉から精肉に加工していくことが重要となってきます。部分肉から精肉へ加工する際にも脂肪や端肉など食用とされない部分がでてしまい、加工の方法や肉の状態により歩留まりは変化していきます。
歩留まりの計算方法とは
加工時の歩留まりはどのように計算したらよいのでしょうか。
サーロインの塊をステーキ用にカットする場合の歩留まりについて、一緒にみていきましょう。
牛1頭からとれるサーロインの塊が10kgあるとします。このサーロインをステーキ用に加工した場合、1枚200gの肉が40枚できました。このときの歩留まりはどのくらいでしょうか?
食品の歩留まりの計算方法は
可食部÷全体重量
で示すことができます。
この式をサーロインに当てはめると
可食部は200g×40=8000g(8kg)となるため、
8(kg)÷10(kg)=0.8
となります。
歩留まりが高くなると加工できる肉の量が増えるだけでなく、利益率の向上につながります。では、歩留まりを改善するためにはどうしたらよいのでしょうか。
部分肉・精肉の歩留まりを改善するためには
精肉加工時の歩留まりを改善する方法はいくつかありまが、ここでは2つの方法を紹介します。
1つ目は肉の保管状態を安定させることです。
肉は時間の経過とともに変色してしまうため、加工時は変色した部分を切り落としたり、余分な脂肪を除いたりして成形するトリミングという工程があります。
肉の変色を防ぐことができると、トリミングの量が減り、加工時の歩留まりは向上します。
肉は低温で保管したほうが状態は良く、肉の温度が上がってしまうと劣化してしまうため、0-2℃が望ましいとされています。また、肉の乾燥や空気に触れて酸化することを防ぐために真空包装して保管することも必要です。
2つ目は精肉の加工技術を向上させることです。
加工者によって部分肉からとれる精肉の量は変化します。そのため、歩留まりを向上させるには熟練した加工者が加工することや機械を使用して加工するといったことが必要になってきます。
冷凍肉の歩留まりの改善方法
国産の肉はチルドで流通しているものが大半ですが、海外から輸入されている牛肉は約半量が冷凍での流通となります。また、豚肉は7割、鶏肉に関してはほぼ100%が冷凍の状態で輸入されており、国内で使用する際には解凍する必要があります。
肉を解凍する方法は、冷蔵庫解凍や氷水解凍を行うことが一般的ですが、解凍機で解凍を行っているところもあると思います。肉を解凍する際に適した方法をとらないとドリップが出ることが多く、歩留まりの低下につながります。
解凍時の食品の内部と外部に温度差がある場合、食品が部分的に溶け、その溶けた水分が細胞膜を傷つけ破ってしまうことにより、ドリップが流出してしまいます。
食品の歩留まりを改善させるためにはドリップの流出を防ぐことが必須であり、ドリップの流出を防ぐためには、解凍時の食品の内部と外部の温度差をなくすことが重要になってきます。解凍機は食品の内部に働きかけ、食品を均一に解凍していくものや、高湿度下で解凍することで効率よく解凍するものなどがあります。
肉の場合は、内部と外部の温度差をなくして解凍することと、加工に使用する場合は完全解凍する前の半解凍の状態で加工していくことが歩留まりの改善につながります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
歩留まりが向上すると、商品として流通できる量が増えることだけでなく価格に直結していきます。
そのためには製造工程の見直しや食品の保存状態の向上、解凍方法の工夫などが必要となります。
食品の製造工程や解凍方法を見直し、歩留まりを向上したい方は一度検討してみてください。