業務用急速冷凍機の活用入門!選び方のコツ、補助金を活かしたお得な購入法まで総ざらい!
「個人商店が、業務用急速冷凍機を導入して大繁盛したらしい」
こんなサクセスストーリーを耳にしたことはありませんか?
EC需要の高まりや人手不足などの背景から、おいしさをキープできる業務用急速冷凍機が、注目を集めています。実際に業務用急速冷凍機を活用した業態転換に成功した食品事業者はここ数年増えており、急速冷凍機による冷凍ビジネスは、今や飲食店経営にとって無視できない存在です。
しかし、業務用急速冷凍機の価格相場は、1台約300万円~と高単価。気軽に購入できるものではありません。また、「速く凍らせる冷凍技術」と漠然と理解していても、複数タイプの中からどれを選べばいいのか、中古品でも大丈夫なのか?などと悩む人も多いのではないでしょうか。
成功すれば費用対効果の大きい業務用急速冷凍機ですが、価格だけで判断して失敗するケースも少なくありません。失敗を避け、冷凍ビジネスを軌道に乗せるためには、急速冷凍機の特性を理解し、食材と機械の相性を見極めることが重要です。
また、一件高価格な業務用急速冷凍機ですが、国の補助金を活用すれば、半額程度で購入できる可能性があります。業務用急速冷凍機の導入を検討されている事業者は、補助金制度の情報も必見です。
そこで本稿は、業務用急速冷凍機の活用入門として、急速冷凍機の仕組みや選び方のポイント、価格を抑えられる補助金制度について解説。活用を検討されている方は、導入前の序章として、ぜひご覧ください。
目次
そもそも、急速冷凍とは?
急速冷凍とは、通常の家庭用冷凍庫よりも速いスピードで食品を凍結させ、冷凍前のおいしさを保つ冷凍技術です。家庭用冷凍庫の場合、外側からゆっくりと温度が下がることで、食品内の水分が膨張し、大きな氷の結晶が細胞を破壊してしまいます。これによって、旨味成分が「ドリップ」として流出。これが品質劣化の原因です。
一方急速冷凍機は、食品内の水分が凍る温度帯(マイナス1℃~マイナス5℃)を30分以内に素早く通過させることで、細胞破壊を防ぎ、食品の旨味や風味をとじ込めて冷凍します。そのため、解凍した時に冷凍前の新鮮な味をキープできる仕組みです。
また、最近は急速冷凍機の技術が発展し、冷凍できる食品も多様化しています。元々は漁港や生産現場で主に使われていましたが、今は調理済みの食品も凍結でる技術が発展し、飲食店など裾野が広がっています。
業務用急速冷凍機の活用のメリット
では、業務用急速冷凍機を導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。実際にあった問い合わせを元に、急速冷凍機のニーズをご紹介します。
EC参入、販路拡大など新たなビジネスチャンス
近年急速にニーズが高まっているのが、販路拡大を目的とした業務用急速冷凍機の導入です。全国どこでも直販できるインフラや出品モールが整っている今、問題は「どうやって届けるか」。
せっかくECを始めても、お店で提供するものよりも品質が下がっていては、お客様をがっかりさせて評判を下げてしまいます。通販であっても、お店と同じ味を再現できるのが理想的。そこで活躍するのが急速冷凍機です。
最近ではアツアツの料理を凍結させる業務用急速冷凍機も開発されており、一見冷凍が難しそうな食品でも、検討してみる予知はあります。また、急速冷凍機を使った販路拡大は事業者規模の大小を問わず増えており、個人経営の飲食店が業務用急速冷凍機を活用してECに参入し、売上が跳ね上がった例もあります。
廃棄ロスの削減
業務用急速冷凍機を使用すると、まとめて調理・保存できるので、半端な食材がなくなります。また、いくら販売予測や計画を立てても、卸先の急なキャンセルに巻き込まれることもあるでしょう。いつでも高品質に冷凍保存できる環境を備えていれば、不測の事態にも対応でき、食材を無駄にせず、コスト削減にも繋がります。
人手不足の解消・人件費削減
下ごしらえから調理、盛り付けまで、ひとつの料理を提供するにも、たくさんの労力がかかります。業務用急速冷凍機を活用すれば、空いた時間に下ごしらえをしたり、メニューによって作り置きを冷凍保管することで、調理時間を大幅短縮。計画的な調理で生産効率が上がることで、人手不足の解消や人件費の削減に繋がります。また、冷凍させることで細菌の発生を抑えられ、衛生面でも安心です。
価格変動に強い
収穫量や漁獲量は天候など自然環境に左右されることが大きく、予測が困難です。しかし、採れすぎてしまうと食材の価格が下り、利益の減少や、廃棄ロスの原因になってしまいます。業務用急速冷凍機を活用すれば、それらの価格変動に巻き込まれず、採れすぎた時は冷凍保管できます。また、時期によって販売価格が変動する食材は、高価格帯で売れる時期にたくさん出荷できるよう冷凍ストックすれば、利益向上に繋がります。
業務用急速冷凍機は相性の見極めが必須
このように、メリットの多い業務用急速冷凍機ですが、全ての冷凍機が、全ての食材にも万能なわけではありません。機械の特性や食材との相性があり、それらを見極めて導入しなければ、期待した成果が得られないこともあります。
実際に、購入した急速冷凍機との相性が悪く、せっかく高価格で購入した業務用急速冷庫を使わなくなった方もいらっしゃいます。これではせっかくの投資が水の泡です。失敗しないためには、急速冷凍機の特性を理解し、機械と食材の相性を見極めることが、業務用急速冷凍機の導入には必須です。
冷凍技術の種類は?大きく分けて5タイプ
では、業務用急速冷凍機にはどのような種類があるのでしょうか。主要な冷凍技術のタイプをご紹介します。
一般的に、急速冷凍機とは、冒頭に説明した「食品内の水分が凍るマイナス5℃~マイナス1℃の温度帯を30分以内に通過して凍結できる機械」を指します。いかにしてこの速さを生み出すかがポイントで、業務用の急速冷凍機は、大きく以下の5タイプに分けられます。
空気凍結(ショックフリーザー)
エアーブラスト(空気凍結)の冷気を強く食品にあてることで、素早く冷凍させる技術です。
例えば「アートロックフリーザー」は、食材にダメージを与えず、高品質に冷凍ができる「マイクロウインドシステム」と食材の投入温度や外気温、湿度などに合わせて自動調整する「スマートフリーズ」を搭載。あらゆる食材をいつどんなタイミングで冷凍しても安定して高品質な冷凍を実現します。
さらに、熱い食品も予冷なしで急速冷凍できる点も、アートロックフリーザーの強みです。「調理したものをそのまま冷凍したい」というお店のニーズに応えています。
ちなみに、ホシザキなどが展開する「ブラストチラー」は、調理したての食品を3℃付近まで急速に冷却させる機械です。細菌が増殖する温度帯(約10℃から65℃)を素早く通過させることで食中毒などの発生リスクを抑え、食品の安全性を守ります。また、ゼリーやプリンのような食品を素早く固めることもできるため、調理時間の短縮のためにも活用されています。
磁場凍結
磁場凍結は、冷凍庫内で磁場を発生させて水分子を細かく振動させ、氷の結晶を小さく保ちながら急速冷凍します。細かい氷の粒の集まりなので、細胞膜を傷つけることはがなく、全体を均一に凍らせることで、食品のダメージを抑えられます。CAS冷凍がこれにあたります。
液体凍結(リキッドフリーザー)
他の急速冷凍機と比較して、圧倒的な凍結スピードを誇るのが液体凍結(リキッドフリーザー)です。食品をマイナス35℃程度の液体(凍結点の低いアルコール等)に浸けて凍結させる技術で、液体は空気よりも格段に熱伝導率が高いため、空気凍結などと比較して数倍の速度で凍結できます。リ・ジョイスフリーザーがこのタイプの冷凍機です。
液体へ浸すため凍結前のパックが原則必要になりますが、真空パックで保管すれば、凍結後の乾燥も防ぐことができます。また、霜取り(デフロスト)が一切不要で、24時間連続稼働も可能なところも支持されるポイントです。
トンネルフリーザー/スパイラルフリーザー
空気凍結の一種で、大型タイプの業務用急速冷凍機です。食品をコンベアに乗せ、強冷風をあてながらトンネル内を通過させ、急速冷凍します。工場に設計されることが多く、ある程度の設置スペースが必要です。
また、スパイラルフリーザーは、コンベアを縦にとり、設置面積の問題を解決したタイプ。処理能力に比べた省スペースや、レイアウトの自由度が特長です。
どちらも高いランニングコストが難点ですが、工場のラインに設計できればとても便利な機械。空気凍結のアートロックフリーザーや、液体凍結のリ・ジョイスフリーザーは、トンネル式にも対応しています。
液体窒素凍結
-196℃の極めて低い温度帯で気化させた液体窒素を、食品に直接吹き付けて凍結させる技術です。食品を瞬間的に冷凍できますが、一気に食品の温度を奪うため食品によっては割れが生じやすく、食品によって向き不向きがあります。
業務用急速冷凍機の選び方のポイントと心構え
ここまで業務用急速冷凍機の種類を紹介しましたが、実際に購入する時にはどのようなポイントを意識すべきなのか。次に、急速冷凍機の購入に向けた心構えと、選び方のポイントを解説します。
急速冷凍機を購入する目的は?
急速冷凍機を活用して何をしたいのかを整理しておく必要があります。EC販売が目的であれば、冷凍させた後に梱包しやすい形状が好ましく、業務効率化が目的であれば、一度に凍結できる量やスピードが重視されるかもしれません。まずは目的を明らかにして、どのポイントを重視するかを整理しておくことをおすすめします。
冷凍する食材を明確にする
どんな食材・食品を急速冷凍させるのかを明確化しましょう。調理済みの食品を凍結させるのか、調理前の食材を凍結させるのか、など凍結対象を明確にすることで、選ぶ機械が絞られてきます。用途が多岐にわたる場合は、食品ごとの使用頻度を加味して選択しましょう。
価格ではなく、費用対効果を考える!低価格、中古品には要注意
急速冷凍機の価格相場は1台約300万円〜と高額ですが、業務用の機械をうまく活用できれば大きな費用対効果を生むことができます。中には中古品や小型の機械などで安価な業務用急速冷凍機も出回っていますが、性能と価格は相関関係にあり、価格が安い機械ほど性能も低いです。低価格の中古品を購入し、すぐに故障して結果的に損をするケースも少なくありません。
一方、性能の良い急速冷凍機は一見高価格な印象ですが、仮に350万円の業務用急速冷凍機を5年使用する場合、1日あたり3,000円(月20日稼働で算出)の費用対効果を出せれば元が取れます。調理時間の短縮や廃棄の削減などの効果で、あっという間に購入価格に到達する可能性も十分にあります。
また、急速冷凍機によっては、リースで購入も可能です。小型の急速冷凍機なら、低価格でリース購入できるものもあります。リースの最大のメリットは初期費用を抑えられる点なので、手持ち資金を他に活用したい場合などには、リースも一つの選択肢です。
使う場所、使う人との相性は?
使い勝手が悪いと、せっかくの急速冷凍機が本領発揮できません。設置する場所や、実際に使う人が作業工程の中で使いやすいかどうかも重要なポイントです。現場の意見も聞き入れながら選んでいくと、失敗が少なくなるでしょう。
理想は複数の機械で凍結テストを
急速冷凍機の活用の目的や食材が明確になれば、専門的な知識のあるアドバイザーの元で、凍結テストをしてみるのが理想的です。同じ食材でも産地によって機械との相性が異なるケースもありますから、実際に冷凍を試してみることをおすすめします。さらに、凍結テストに加え、使い方のレクチャーやアフターケアなどのサポートもしてくれる事業者なら、一層安心です。
投資コストを抑える方法は?半額購入も可能にする補助金制度をチェック
最後に、高価格な業務用急速冷凍機を、補助金制度を活用して少しでもお得に、安く入手する方法を紹介します。
日本では、中小企業の設備投資を支援する補助金制度「ものづくり補助金」が設けられています。補助金額は最大1,000万円で、設備投資額の1/2〜3/4。これを活用すれば、投資コストを大幅に抑えられます。
業務用急速冷凍機の導入を検討している事業者としては、なんとか採択されたい補助金ですが、採択率は4割程度。申請で提出する事業計画で事業の発展性を期待させるなど、採択されるための対策が必要です。
また、災害や今で言うと新型コロナの影響の事業再建の場合、補助率の引き上げや、特別な補助金が設けられることもあります。それらの情報収集も、補助金対策には重要です。
採択されるかどうかでコスト負担が大きく変わるものなので、しっかり補助金対策を立てて申請することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?
業務用急速冷凍機の活用は、生産効率化や新しいビジネス機会の創出など、たくさんのメリットがあることをお伝えさせていただきました。一方で、相性の良い業務用急速冷凍機を見極めて選択しなければ、その成果は半減しかねません。
空気凍結や液体凍結など、同じ急速冷凍機でも凍結プロセスや媒体が異なる業務用急速冷凍機の特性をしっかりと理解し、できれば複数の急速冷凍機で凍結テストをしてみることが好ましいでしょう。
また、補助金制度を活用すれば、高価格な業務用急速冷凍機も、価格を抑えて購入できる可能性があります。価格だけを見て中古品を選ぶのではなく、費用対効果を意識し、急速冷凍機を使って5年後10年後にどんな効果を狙うのか。しっかりと計画を立て、急速冷凍機の技術を120%活かして、冷凍ビジネスを成功させてください。
今回は業務用急速冷凍機の基本をまとめました。急速冷凍機の性能や価格、補助金についてなど、ぜひ導入前の情報収集に役立ててください。